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今年のHalloweenは/高坂と志音⑤
仕方がないから渋々衣装を身につける。ウィッグもかぶった方がいいよな? 服を着てウィッグをかぶり、腿までのストッキングとガーターベルトを着けて、俺はリビングへ向かった。
「………… 」
なんだか先生、怒っちゃってるし悲しいし、この格好が恥ずかしいし……俺、泣きそうなんだけど。
リビングに行っても先生はいなかったから、すぐに寝室のドアを開ける。
暗く電気を消した部屋で、先生はベッドに腰かけ俺を見ていた。
「着てきたよ……これでいい?」
黙ったまま先生は手招きをするから、おずおずと近づき俺は先生の前に立つ。
「……恥ずかしい?」
そんなの恥ずかしいに決まってるじゃん。
「………… 」
それに先生の目がいやらしくてドキドキする……
俺は先生から目を逸らし、小さく頷く。
ベッドに腰掛けたままの先生が、前に立つ俺の腰を優しく撫でた。
「……んっ」
服の上から優しく触れられただけなのに、息が荒くなってしまう。
「んっ……やだ……」
「……どうした? 感じてんの?」
顔は怒ったまま、冷たい目で俺を見上げる。
でも凄いいやらしい……
「陸也さん……なんか怖いよ。やだ……ごめんね。怒らないで……」
いつもの優しい顔に戻ってよ。
いつもみたいに好きだと言って頭を撫でて……
そんな顔して俺のことを見ないでよ。
俺は堪らなくなって先生の前に跪き、座ってる先生の腰にしがみついた。
「陸也さんごめんね」
冷たくされるのは悲しい。
いつも優しい先生が怖い顔をしてるのは堪らなく嫌だ……
「志音?……顔上げて」
先生が俺の頭に手を置き、優しい口調でそう言ってくれたから慌てて顔を上げる。
「意地悪しすぎたかな? 俺の焼きもち……ごめんな。ほら、こんなのいらないから……ちゃんと顔見せろ」
そう言って俺のかぶっているウィッグを外すと優しく頭を撫でてくれた。
「おいで……好きだよ」
いつもの優しい顔に戻り、俺は嬉しくてその膝に飛び乗りギュッと抱きついた。
「陸也さん、ごめんね。嫌だったよね?」
「ははっ……だからいいんだよ、俺の焼きもちだから。でも敦とはあんまりくっ付いてほしくないから……」
そうだよな。
先生は前に俺と敦がキスしてるのを見てるんだ……
嫌に決まってる。
「うん……ごめんね、嫌な気持ちにさせちゃって」
俺は先生の首に腕を回し「大好き……キスして」と言って唇を重ねた。
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