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不思議なXmas②/圭から見た陽介は
親父と共にまわってるツアー最終日、ライブを終えて今日もホテルに一人戻る──
ここ数ヶ月、俺はホテル住まいで独りぼっち。
いや実際は別室には親父もいるし仲間も一緒なんだけど、陽介と別れてからは何だか体の一部が欠けてしまったかのようで何とも言えない気持ちになっていた。
ただ毎日を無感情に過ごしているだけ。こんなんじゃダメなんだとわかっているけど、気持ちがどうしてもついていかない。
陽介がいないとこんなにもつまらないんだと、離れてみて初めてわかった。楽しいことがあっても、意識して笑顔を作らないと笑えない。辛いことがあっても涙が出ない。
やる気が起きない……
こんなことで、俺はちゃんと陽介の元へと帰れるのだろうか? 今すぐにでも帰りたいのに、親父を納得させるような事は何一つできていなかった。
部屋に入り、ソファに座る。
陽介は今頃なにしてるのかな。
いつも一人になると頭に浮かぶのは陽介の事ばかり。
陽介も俺みたいになってないかな? いや、陽介は強いから大丈夫だ……きっと何も変わらず元気にやってる。
そうだ、だから俺も頑張らないと……と、遠くにいる陽介のことを思った。
「え……?」
何となしにベッドに目をやると、何かがもぞもぞ動いてるのに気がついた。
俺は夢でも見てるのかな?
目の錯覚かな? 相当参ってるな、俺……
ネズミか何かと思ったそれは、理由はわからないけどネズミくらいのサイズになった陽介だった。
え? なんで? と驚いたけど、夢だっていいや。
ちっさくてもいい……こんなに素敵な夢を見させてくれて、神様に感謝だな。そんな事を思いながら、俺はミニ陽介を観察することにした。
ミニ陽介は俺には気付かず「はぁ??」と声を上げ、その場で固まってる。
……面白い。
人形にでもなったのかと思うくらいジッと動かなくなり、本当に人形だったのかと心配になってしまう。夢から覚めるのはもうちょっと待って……と陽介を見ながらハラハラした。
「これは夢だ。うん……もっかい寝よう」
陽介はそう呟くとコロンと横になった。
でも、横になってすぐ「寝れるわけねえ」と言ってむくりと起き上がる。起き上がったかと思ったら、コロコロと転がってみたり、小さい手でシーツを手繰り寄せて体に巻きつけたりし始めた。巻きつけるとまたしばらくのあいだ動かなくなった。
どうしたのかな?
もう可笑しくて可愛くて吹き出しそう。
なにこの陽介。
可愛すぎるだろ……
俺に気がつかないのな。陽介からは俺のこと見えないのかな?
俺は我慢できなくなって、そぉっとベッドに近づいた。
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