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不思議なXmas⑥/キスしたい
「どうでもいいけど飯にしようぜ。さっきは少し持ち帰るって言ったけどよく考えたら無理だし、ルームサービス取ろうと思って……だから俺もあまり食ってこなかったんだよね。陽介と一緒に食べたかったから」
俺の体をムニムニと揉みながら嬉しそうに圭ちゃんが話す。
圭ちゃんに触れられてるのは嬉しいんだけど、モニモニされ過ぎてちょっと気持ち悪い。
「俺は何でもいいし……ねぇ、さっきから何? 腹揉まれてるとちょっと気持ち悪いよ」
無意識なのか、さっきから俺を軽く握ってる圭ちゃんは俺の言葉に慌てて手を離してくれた。
「ご、ごめん。なんか触ってないと消えちゃいそうで嫌だったから……」
「………… 」
不安そうな圭ちゃんの顔を見て切なくなった。
「大丈夫だよ。多分まだ消えないから」
何となくそう思って圭ちゃんに抱きついた。
俺はまだここにいたい。この状況はよくわからないけど、でもまだ圭ちゃんと一緒にいたい。
夢から覚めるまでは……
圭ちゃんがルームサービスを頼んでくれたけど、どれも量が多すぎる……てかデカすぎるからいちいち笑いながら圭ちゃんが小さく切ってくれた。
「面白いな、あんまり小さく切ると崩れるからこれくらいが限度だよ」
そういって器用にサンドイッチについているプチトマトを切ってくれる。大玉のスイカ以上に大きいプチトマトを両手に持ち頬張るけど、トマトをこんなにたくさん食べるのもなんか嫌だな。トマトとサンドイッチのパンの部分だけで腹いっぱいになってしまってギブアップ。
あまりにも食べ物がデカくて、あんまり食欲もわかなかった。
俺は圭ちゃんの膝の上でゴロンと横になる。
「………… 」
「なに? 飯食ってんの下から見られるの、恥ずかしいんだけど」
圭ちゃんのもぐもぐする口元をジッと見ていたら、嫌がられてしまった。
……キスしたいな。
せっかくまた会えて二人きりなのに、まともにキスもできない。
「……キスしたい」
小さく呟いたから、圭ちゃんには聞こえてない。
ゴロンと横になったまま、俺は圭ちゃんから顔を逸らした。
しばらく静かに食事をしていた圭ちゃんに、いつの間にかうつらうつらしてしまっていた俺は起こされる。
「……ごめん、俺寝てた?」
顔を上げると、少しだけ寂しそうな顔をした圭ちゃんが俺の事を見おろしていた。
「………… 」
「圭ちゃん? 飯、終わったの?」
「………… 」
黙ったままの圭ちゃんにジッと見つめられ、俺は胸がドキドキしてくる。
さっきまで楽しそうに笑っていたのに。何でそんなに辛そうな顔して俺のこと見るの?
「圭ちゃん? どうした?」
圭ちゃんの頬に触れたいのに、俺の手は届きもしない。
……もどかしい。
「どうもしないよ。俺、風呂入ってくるね」
ボソっと呟いたかと思ったら、そそくさと圭ちゃんはバスルームへ行ってしまった。
大好きな人が明らかに様子が変なのに、こんな体じゃ追いかけることも出来ないのか。
俺は何でここにいるんだろうな──
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