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屋上その後⑤/修斗の心境
康介がわかりやすく俺に対してガッツいてくる。
嬉しいけどちょっと怖い。そりゃ俺だって久しぶりだから早く康介に触れられたいよ……
でもホテルの部屋に入るなり、その場で押し倒してくる事ねえじゃんか。何でいきなり汚ねえ床に転がらなきゃなんねえんだよ、ふざけんな。
いつものようにホテルに行く前にコンビニに寄って飯を買う。その時に康介と別れていた間に遊んでた奴らに声をかけられてしまった。
悪い奴らじゃないんだよ?
普通に友達……
でも俺狙いの女の子とも一緒に遊んだりしてたのは、やっぱり康介的には面白くなかったよな。もう遊べねえって事、ちゃんとあいつらに伝えたけど、それでもやっぱり康介は不機嫌そうになってしまった。
あんま俺、フラフラしてると今度こそ康介に愛想つかされて捨てられちゃう。そんな事を思っていたら、俺の手を握る康介の手にキュッと力がこもった。
きっと康介も同じ事考えてるんだ。次はねえぞ……と言われてるような気がして申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
俺はこんなに泣き虫なんかじゃないのに……康介の事となるとダメだな。恥ずかしいくらい些細な事で泣きたくなる。
部屋に入り、すぐに康介の背中に抱きついた。
「……康介、怒ってる」
謝りたくて。
康介の笑顔が見たくて……
「怒らないで。俺がバカだったんだってちゃんとわかってるから。一番わかってて情けなく思ってんの俺だから……ごめんね」
康介の事だから、きっとまだモヤモヤしてるところはあると思う。でも俺を気遣って「怒ってない」って言ってくれる。思った通りの返事をもらえて俺は内心ホッとした。
キスからなし崩し的に事が進んでしまいそうな康介の勢いを止めるために軽く殴ってしまった。だって何の準備もしてねえし、凄え鼻膨らんでるから止まるわけないと思ってちょっと焦ってしまったんだ。
……恥ずかしいじゃんか。
どうせいつもの康介のペースになるのはわかってるよ。でもこういう時くらいさ、俺が康介の事よくしてやりたいじゃん。
お詫び……じゃないけど。
俺が康介の事可愛がってやるって言っちゃったし。
俺だってたまには主導権握りたい。年下相手にそんな風に思うの情けねえな。
康介を待たせて、なんとか一人でバスルームに入ることができた。シャワーを浴びながら、これからあの状態の康介に抱かれると思うと下腹部の辺りがキュッとなった。
ガッツいてるとか、俺も康介のこと言えないな。
一通り支度も整え、バスルームから出ようとしたら突然康介が入ってきて驚かされた。やけに大人しくして乱入して来ねえなって思ってたんだよ。ここまできたらもう入ってこないって思うだろ……
油断した。
そんな熱い視線で俺のこと見るなよ。
「俺、ちゃんと待ってましたよ」
康介の熱に怯んで後ずさるも、腰を捕まえられてしまい余計にドキドキしてしまう。
どんどん熱が集まる……
「お利口さん……」
そう言って康介の頬にキスをし、俺は焦る心を誤魔化し隠した。
不満そうな康介に無言で腰を押し付けられる。俺はタオル一枚、康介は俺が前にあげたボクサーパンツ一枚。あからさまな態度に息が荒くなってしまう。
キスをしたい……
早く康介に抱かれたい。
「さっきはゴメンな……痛い?」
それでも康介のペースにするもんかと俺は冷静を装い、先程殴りつけた頬を撫でながら康介に聞いた。
そしたら俺の言うことを何でも聞いてくれたら許してやるなんて、調子に乗った康介に言われた。
ばか……って逆の頬を抓り誤魔化したけど、どんなことを言われるんだろうって考えたら堪らなくなってしまった。
俺がいくら強がってもきっと康介にはお見通しなんだ。それでも俺が可愛がってやると宣言をして、康介をバスルームへと追いやった。
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