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新しい生活①/プチ遠恋中

卒業旅行も終え、俺はすぐに会社の研修に入った。 一ヶ月間の社員研修。 会社の研修施設で、一般常識的なことから専門的な接客のノウハウなど、いろんな事を学ぶ。家から通える距離ならいいんだけど、俺の場合は遠いからその施設内の寮に泊まることになった。 康介と一ヶ月も会えないなんて、俺大丈夫かな? 一応康介なりに気を使ってるらしく、向こうから電話をしてくることはない。研修が始まってからは毎日俺から連絡を入れていた。 電話に出ると康介は決まって「今大丈夫なんですか? 一人?」なんて聞いてくるから本当に可愛い奴って思ってしまう。でも本音は、たまには康介からも電話してほしい。すぐに出られなくてもさ、留守電にメッセージなんて入ってたら俺凄え嬉しいのに…… でも何だか恥ずかしいから、そんなこと絶対に言わない。 今日も部屋に戻り携帯をチェックする。 康介からの留守電やメールは相変わらず入ってない。俺はひと通りSNSを眺め、シャワーを浴びてから康介に電話した。 ワンコール鳴るか鳴らないかのタイミングですぐに電話に出る康介にちょっと驚く。 「なに? めっちゃ出るの早いじゃん」 『あ……俺、今丁度携帯手に持ってたから……修斗さんお疲れ様……』 あれ? 心なしか元気がない? ちょっと気になったけど、いつものように俺は今日あったことや他愛ないことをお喋りした。今日の康介は口数少なく、俺の話を黙って聞いていることが多かった。 「なぁ、康介どうした? 何かあった?」 やっぱり康介の様子が変だと思い、思い切って聞いてみるも「何でもない」の一点張り。でも、俺に同室の奴が今いるかどうか確認をしてから小さな声で「修斗さん……」と呼び掛けられた。 『あの、俺の事……好きって言ってください。愛してる?」 いや、今日は同室の奴は親族に不幸があったとかで、たまたま帰宅していないから俺一人なんだけど…… 「なんだよ、どうしたんだよ。康介? 寂しくなっちゃった?……あと半月だよ。ごめんね。好きだよ……愛してるって」 「………… 」 そうだよな、不安だよな。 俺は康介は人一倍自分の事には鈍感で、自信がない事を思い出す。社会に出た俺に気を使い、自分から連絡もしないように我慢してくれてるんだ。 何だかそんな康介がいじらしくて、今すぐにでも飛んで行って抱きしめてやりたくなった。 「康介…… 愛してるよ。心配しないで」 もう一度電話口に囁くと、向こうから切ない吐息が漏れ、小さく「俺も、好き……」と聞こえてくる。 恥ずかしがり屋の康介。 電話だと顔が見えない分、いくらか素直なのかな。でも寂しさからの素直さだと思うと、それも申し訳ない気持ちになる。 康介の小さな息遣いが、泣いているようにも聞こえ胸がキュッと苦しくなった。 「俺……早く康介に会いたい。研修終わったら真っ直ぐ康介んち行くからな。あと少しだけ辛抱な?」

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