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新しい生活④/修斗さんのいない生活

卒業旅行が終わってあっという間に修斗さんは研修に行ってしまった。 俺は寂しさを紛らわすため、帰ってきてから修斗さんと遊ぶための金を稼ぐために、結構頑張ってバイトのシフトをぶち込んでいた。 春休みもすぐ終わり、新学期が始まる。 修斗さんや周さんのいない学校。竜も心なしか寂しそうにも見えるけど、きっとそれは俺が勝手にそう見てるだけなのかもしれない。俺が寂しく思っているから、竜も同じであって欲しいな……って。 いくら寂しく思ってたって、普通に毎日は過ぎていく。 竜は今までとあまり変わらず、放課後時間が合えば周さんとデートをしたり、ライブに行ったり…… そうそう、圭さんがいなくなって、修斗さんと周さんと靖史さんで三人でバンド活動していたんだけど、修斗さんは高校を卒業して就職したからやめちゃったんだよね。俺は続けてもらいたくて反対だったけど、やっぱり中途半端な気持ちでいるのは失礼だから……って言って、周さん達と話し合って決めたみたい。 修斗さんがやめてからすぐに代わりのメンバーが入った。俺がとやかく言う資格は無いからしょうがないんだけどさ、ちょっと寂しかったな。 ステージの上の修斗さんが誰よりもカッコよくって、俺まで何だか誇らしくて。もうそれが見られないって思ったら泣けてきた。 竜に誘われて、メンバーが変わってからのライブにも行った。修斗さんが抜けてからのD-ASCHも、変わらずカッコよかったよ。やっぱり俺はファンだから。修斗さんがいなくたって応援するよ。 ばたばたと毎日を過ごし、バイトに明け暮れ、修斗さんと毎晩電話して、やっと待ちに待った修斗さんの研修終わりの日。 半日研修をして、午後の新幹線で帰ってくる。 自宅に戻らず真っ直ぐ俺の家に来てくれるって言ってたから、俺もバイトが終わったらすぐに帰ろう。今日のこの日は土曜日だし、早番にしてもらったんだ。 夕方にはきっと到着するだろうから、それまでに部屋も片付けて……そうだな、夕飯はどこか食べに出かけよう。それとも疲れてるようだったら弁当買ってもいいよな。あれ? 母ちゃんいたかな? いたら飯作ってもらお。 「お疲れ様でしたー! お先です!」 俺は修斗さんと会えることに浮かれながら帰り仕度を整える。でも浮かれた気持ちとは裏腹に、何となく体が重かった。 ……? 連日働き詰めだったからか、何だか目眩もする。 疲れてんのかな? 体が重いのも目眩がするのも「気のせい」と誤魔化し、俺はチャリを漕ぎ漕ぎ急いで帰った。

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