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新しい生活⑥/うつるから……
「康介? どうした?……あれ? 泣いてんの? ウケる」
修斗さんが思いっきり布団をめくって、俺の顔を見るなりクスッと笑った。
なんだよそれ……
「泣いてねえし!……でもごめん。凄え久しぶりで嬉しいのに……俺なんだか起きてらんない。頭痛い……ごめんなさい。せっかく俺んちまで来てくれてんのに…… 」
やっぱり申し訳ないのと悔しいのとで泣きたくなってくる。
「いいよ謝んなくて、しょうがねえじゃん。てかさ、康介も風邪ひくんだな。発熱とかいって、俺と付き合ってから初めてじゃね? まじウケる!」
俺の勉強机の椅子に座って、くるくる回りながら笑ってる修斗さん。
ちょいちょいムカつく。可愛いけど……
でも反論する元気もない。
「風邪うつるだろ、大人しく寝てろよ。腹は? 食べられそう? お粥、あっため直して持ってくる?」
修斗さんは起き上がろうとする俺を強引に押して布団をかけた。
風邪うつるだろ、ってまるで避けられてるようで……ってか、避けられて当然なんだけど、ちょっとショックだった。
「……いらないです。大人しく寝てます」
「そお?」
俺は布団に潜り込み、目を瞑る。
そうだよ、いじけてる場合じゃ無いし。本当に修斗さんに風邪うつしちゃったら大変だ。
寂しいけど……
「修斗さん……もういいから、風邪うつしちゃったら嫌だし……月曜には初出勤でしょ? もう帰ってください。ごめんなさい。せっかく来てくれたのに……」
「………… 」
あれ?
修斗さん、どこだ?
布団から顔を出し、机にいると思ってそちらを見たけど修斗さんはそこにはいなかった。あれ? って思ったのも束の間、修斗さんは俺の足元からベッドに乗り込んできた。
「ちょっと! 何やってんすか! こっち来ないでください! 風邪うつるでしょ!」
「なんでだよ! なんで帰れとか言うんだよ! せっかく来たのに! 康介のバカ!」
はぁ?
だから……!
「だから! 風邪うつしちゃうから! ごめんって言ってるじゃん!」
「おい! 康介こっち向くなよ! 風邪うつるだろ!」
思いっきり顔を掴まれ、無理やり顔の向きを変えさせられた。
くそ首痛え。
なんなんだよ……
「ほら……これならうつらねえだろ? 俺は帰んねえよ? 康介と一緒にいたいもん」
そう言って修斗さんは一緒にベッドに潜り込んで来て、俺の背中にぴったりとくっつくようにして背後から抱きついてくる。
「………… 」
「一緒に寝よ?」
「………… 」
バカじゃないの?
こんなの寝られるわけがないし、風邪うつしちまう。
「チューしなきゃ平気だよね。康介……体熱いね。頭痛い? 大丈夫?……早く元気になぁれ……」
あれ?……天使かな?
俺の背中に頭を押しつけるようにして修斗さんがぶつぶつと喋っている。
逆にさ、これ熱上がるんじゃね? ほら、もうドキドキしてきて顔が熱いし。
俺を抱きしめる修斗さんの腕が胸元を弄る。さわさわと撫で回すその腕が下の方に伸びてきて、そっと俺の股間に触れた。
なんで揉むの?
ムラムラしちゃうじゃん……てかもうとっくにムラムラしてるし。
バカ。
「ああ? こんなになって、康介のエッチ。熱あるのになんで元気なんだよ」
なんでじゃねえよ! あんたが散々触ってくるからだろうが!
……違う意味で頭痛い。
「修斗さんやめて。俺、しんどい」
正直こんなに密着されたら押さえつけてキスしたいし舐めまわしたい。
どんだけ今まで我慢したと思ってんだよ。ぶち犯すぞ、このやろう……
「……いや?」
スウェットの中に手を忍び込ませてきた修斗さんが小さく呟く。
「んっ……ダメだってば。気持ちい……から」
俺はいたずらに蠢く修斗さんの手を掴み、離そうとするけど全然やめてくれない。
「やだー。康介のちんちん見たい」
……ダメだ。
修斗さんも久しぶりすぎてちょっとおかしい。
俺は抵抗するのを諦めた。
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