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新しい生活⑨/新しい生活へ
不思議に思い耳をすますと、確かに人の気配がする。
「………… 」
気になってそぉっと廊下を見てみると、隣の部屋から出てきた兄貴と鉢合わせた。
「兄貴! いつから家にいた?」
「いつからって……ちょっと前?」
兄貴は何か言いたげな顔をしてニヤついている。勘弁してくれよ……
「お前なぁ、そんな顔して。勘弁してほしいのは俺の方だぞ? 誰が好き好んで身内のエッチ見なきゃいけないんだよ。部屋のドア、ちゃんと閉めてからやることやれよ。お袋いないからいいけどひょっこり帰ってきたらどうすんだ?」
「………… 」
俺らの話し声で修斗さんも部屋から出てくる。
またこの人ったら、あられもない格好で……ちゃんとパンツ履いてる? 大丈夫?
「修斗も声デカイって。ゴメンな、弟が変態で……無理して付き合わなくていいからな」
「……あ、いや、大丈夫……です」
修斗さん、大人しくなっちゃった。兄貴絶対揶揄ってるんだ、むかつく。
「ひとり暮らしでもう家出てんだから、ちょくちょく帰ってくんなよ! それにわざわざ言うことじゃねーだろ、部屋入れよむかつく」
ニヤニヤしている兄貴を部屋に押し込み、俺は修斗さんと部屋に戻る。
「修斗さんゴメンなさい……兄貴のクソが」
なんか最近こんなのばっかだな。
周さん達といい兄貴といい、修斗さんのエロいところなんて誰にも見せたくないのに。
「いや、流石に陽介さんに見られるのは凹むな。周や竜太君は平気なのに……」
いやいや、周さんや竜でも恥ずかしがってよ……
「なんだよ、兄貴だけ特別みたいに言うのなんか嫌だ」
俺が不貞腐れると修斗さんは笑って抱きしめてくれた。
「陽介さんはね、正直憧れるよ。初めて圭さんと付き合ってるってわかった時にさ、堂々としててこの人凄えなって思ったんだ。それに康介の兄貴だし……俺にとっても特別だから」
「それはわかったけど、俺が一番じゃなきゃ嫌です」
そう言ったら「は?」って言ってほっぺを抓られた。
「康介はバカだな。好きだよ……一番に決まってるし。てかさ、康介熱下がってね? 元気だよな? いつも通りじゃん。頭痛くないの? 大丈夫?」
指摘されて気がついた。
本当だ。俺、何ともないや。
でもやっぱり修斗さんにうつしてしまってないか、すごく心配。
「いや、大丈夫だって。なんかうつされてる気がしねえから」
笑って宣言した通り、修斗さんは風邪をひくことなく、元気に月曜日には仕事に行った。
修斗さんは初出勤。
俺は学校。
こうして本格的に俺らの新しい生活がスタートした。
余談だけど、俺の発熱、風邪じゃなくて知恵熱だったんじゃないかって後から母ちゃんに笑われた。
知恵熱って……そんなわけねえじゃん!
子どもかよ!
── 新しい生活 終わり ──
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