113 / 210

小さな訪問者①/予定変更

せっかくの連休なのに、どこにも出かけられなくなったと周さんから連絡が来て、とりあえずよくわからないので言われた通り僕は荷物を持って周さんのアパートへ向かう。 荷物というのはお泊まりのセット。着替えや料理をする食材くらいなんだけど、お気に入りの鞄に諸々を詰めて、いそいそと僕は出かけた。 雅さんが謙誠さんと再婚をしてから、周さんはアパートで一人暮らし。僕は週末にはなるべく訪ねるようにして、洗濯とか掃除なんかをしてあげている。周さんは卒業してからはバイトだったりライブだったり、何かと昼夜忙しくしているから、少しでも僕が周さんの助けになればな……って思うし、何より周さんと会いたいっていうのが本音。理由をつけては僕は周さんの部屋に居座っているんだ。 今日は本当は連休で仕事もないから、何処か二人で出かけよう、車で遠出してもいいねって、簡単に予定を立ててたんだけど、どういうわけか苛立った声の周さんから電話が入り、どこにも出かけられないからとにかく早く来てくれと言われ、僕はこうして周さんのアパートに向かってるわけ。 どうしたんだろう…… 出かけられなくなったって、車が使えなくなったのかな? 故障? それとも周さん、具合悪くなっちゃったのかな? 風邪? 熱? でも電話の声は元気そうだったよね? 出掛けられないって事は家から出られないって事? お家の鍵を無くしちゃったのかな? それなら僕が合鍵持ってるから大丈夫だよね。 黙々と考えながら、それでも久しぶりに周さんと会えることが嬉しくて早足で歩く。別に一緒に居られれば、無理に出かけなくてもいいし、二人でのんびり出来るならどこでもいい。 部屋でずっとイチャイチャしててもいいよね? ちょっとエッチなことを考えてしまって思わずにやけてしまい、慌てて頬を叩いた。 周さんのアパートに着くと、僕は合鍵を出し自分でドアを開ける。 「周さん、お邪魔します」 一応声をかけるも周さんからの返事はなかった。 また昼寝でもしてるのかな? そう思って僕は部屋の中へ進む。案の定、いつものように周さんはリビングのソファにゴロンと横になり、足を投げ出すようにして眠っていた。 チラッとその姿を確認した僕は、起こさないようにそのまま荷物を奥の部屋に持っていこうとソファの横を通る。 ………? スースーと寝息を立てる周さんの寝顔を眺め、でも不思議と何やら違和感を感じて僕はもう一度周さんを見た。 「え! え?……何? 何で?」 改めて見た目の前の周さんの姿に、僕は驚きのあまり手に持っていた荷物を下に落としてしまった。

ともだちにシェアしよう!