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小さな訪問者②/衝撃の事実
ソファで気持ち良さそうに寝ている周さん。
そしてお腹の上にしがみつくようにして乗っかっているのは紛れもなく赤ん坊。
「人形?……なわけないよね」
恐る恐るその赤ちゃんの顔を覗き込む。周さんと同じように可愛い寝息を立てて眠っているのは、何度見直しても人形ではなく赤ちゃんだった。
周さんの手が赤ちゃんの背中を押さえるようにして乗っかっているものの、バランスを崩して落っこちたら大変だ。
「周さん起きてください。ねえ起きて…… 」
僕は赤ちゃんは起こさないように、出来るだけ小声で周さんの顔のそばで囁く。幸い眠りが浅かったのか、すぐに周さんは目を覚ましてくれた。
「お、竜太……やっと会えた」
むくりと起き上がる周さんは赤ちゃんをヒョイっと抱え直しソファに座る。そのあまりにも雑な扱いに内心ひやひやしながら、僕は周さんに赤ちゃんのことを訊ねた。
周さんが起き上がって動いたせいで、眠っていた赤ちゃんも起きてしまう。それでも周さんにギュッとしがみついたまま、不思議そうな顔をして僕のことをじっと見つめた。
「何こいつ、俺の時はめちゃくちゃ泣いたくせに竜太なら大丈夫なのか?」
周さんの声に反応し、今度は周さんの顔をじっと見ている。
なにこれ……凄い可愛い! こんな間近で赤ちゃんなんて初めて見た。
周さんが赤ちゃんを抱っこしている姿が物凄く違和感あるけど、周さんまで何だか可愛く見えてしまった。
「周さん、その子は?」
「あ? こいつ尚 。急に預かることになっちまった」
「……はぁ」
いや、その子の名前とかじゃなくて、この子はどこの子で、何で周さんが赤ちゃんを預かるのかって事が知りたいんだけどな。
「あ、こいつお袋が産んだんだとよ」
……?
「は?? 雅さんが産んだって、雅さんの子ですか?」
周さんたら凄い他人事のように言ってるけど、え? そういうものなの?
「だって、この子産まれてからだいぶ経ってますよね? 周さん雅さんから子どもが出来たって聞かされてなかったんですか? え? てことは、結婚パーティーの時にはお腹の中? え? えぇ?」
見た所、一歳には満たない感じだけど、もうしっかりしてるしヨチヨチ歩きそう。生後何ヶ月くらいなんだろう。
もう僕は大混乱。
だって普通兄弟ができるって、ちゃんと知らされるもんでしょ? え? 周さん知ってたのかな? 僕は聞いてないよ?
「……恥ずかしかったんだとさ」
「は? 恥ずかしいからって、え? そういうものなの? だからってここまで内緒なの??」
「あぁ、でもなんか一度は電話で俺に言ったらしいんだけど、いやぁ全然覚えてねえんだよな。まぁいきなりでびっくりだよ」
僕だってびっくりだよ。
絶対周さん、電話しながら寝てたんだ。
信じられない。
あまりにも衝撃的だったけど、とりあえず赤ちゃんの素性がわかってホッとした。
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