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小さな訪問者⑦/お見通し

ここのケーキ屋も、いつもみんなで行くケーキ屋と同じく店内で買ったものを食べることができる。このお店も僕が好きな店のひとつだ。 店内に入り、ショーケースの中から食べたいものを選ぶ。周さんは相変わらず僕が食べたいやつでいいと言い、コーヒーだけ注文していた。 店員さんが周さんが抱っこする尚ちゃんを見ていることに気がついた。 「あ……あの、赤ちゃん連れでも大丈夫ですか? こちらで買ったものではなくて、持ってきたお菓子をあげてもいいでしょうか?」 僕は持ち込んだ菓子をあげてもいいか一応尋ねると、店員さんは笑って快くオッケーしてくれた。店内も他に客もいないし、奥のテーブルを広く使ってくれても構わないとも言ってくれ、ほっとした。 周さんと半分こするチーズケーキと、おめあてのシュークリームを頼む。紅茶も一緒に購入し、トレーに乗せて周さんの隣に僕も座った。 恭介さんはコーヒーだけ、春馬君はショートケーキを頼み僕らの前に座る。 男四人に赤ちゃん一人……… よく考えたらちょっと不思議、目立つよね。他のお客さんいなくてよかったってちょっと思った。 「竜太君、しっかりしてんな。周じゃそんな気遣いできねえだろ……」 恭介さんがさっき僕が持ち込みオッケーかどうか店員に聞いていた事を言って褒めてくれる。でも子ども連れだとどうしても周りに気を遣ってしまうよね。 ケーキを食べながら、久しぶりの再会に他愛ない話で盛り上がる。さっきまで大人しく赤ちゃんせんべいを食べていた尚ちゃんが、僕らのケーキを欲しがってぐずり始めてしまった。 「ケーキわけてやれば? 二つもあるんだし」 周さんが僕の食べかけのチーズケーキにフォークを刺す。 「あ、でも尚ちゃん食べられるのかな? まだ早いんじゃ……」 僕の言葉に周さんは行き場の失ったチーズケーキを仕方なく自分の口に放った。あまり気にせず、なんて雅さんのメモにはあったけど、それでもまだ食べさせちゃいけないものなんかもあったから、下手に大人の口にするものをあげるわけにはいかないよね。 「あぁ、もうしょうがねえな! 全く世話焼けるな……どら、兄ちゃんと一緒に外に出てるか?」 周さんは尚ちゃんを抱き上げると、ちょっと外で気を紛らわせてくると言い店から出て行ってしまった。 「あ、俺も行く。周、待って」 恭介さんも、周さんについて店から出て行く。 「周さん、自分のこと兄ちゃんって言ってた。なんか変な感じだね」 ショートケーキを口に頬張りながら春馬君が笑った。面倒臭そうにしてる割には、面倒見の良い周さん。僕も気づいていた。 「でもやっぱり年の離れた兄弟……っていうより、周さん大人っぽいし親子って感じがしちゃう」 春馬君の言葉に、また僕は複雑な気持ちになりシュークリームを頬張る口が止まってしまった。 「……あれ? 竜太君、元気なくない?」 「……別に」 春馬君に見つめられ、僕は思わず目をそらす。 「別に、なんて言っちゃって、ほらクリーム付いてるよ」 おもむろに伸びてきた春馬君の指が、僕の口元からクリームを攫っていった。 「あ……」 指先のクリームをペロッと舐め、春馬君は首を傾げる。 「竜太君はわかりやすいね。何か悩み事?」 お見通し…… 春馬君には敵わないや。

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