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初めての…②/抱かせて

「どうしても……抱きたいの?」 上目遣いで俺に聞く祐飛の顔がちょっと不安そうに見える。 もしかしたら、過去のあの一件で何かトラウマになっている事があるのかもしれないと気が付いた。想像もしたくないけど、あの時祐飛があいつらにされていた事は俺でも薄々わかっていた。 「うん……抱かせて。大事にするから」 祐飛の気持ちを考えたら堪らなくなった。泣きそうになってしまったのを隠すために思いっきり祐飛を抱きしめる。 そうだよ…… 祐飛は俺の気持ちに合わせてくれた。もしかしたらまだこういうことには抵抗があるのかもしれない。それなのに、俺は自分の欲ばかりで何やってんだよ。 「嫌だったら……いいから。無理しなくても、俺待ってられるから」 抱きしめたまま俺は祐飛にそう伝える。申し訳ない気持ちが溢れてくる。 「俺にも直樹のこと、抱かせてくれるならいいよ」 俺の心配をよそに、祐飛は明るく……寧ろ楽しげに俺に言った。 あれ? 心配しすぎ、だったかな? 「……いいの?」 俺にも抱かせろと言う祐飛の意見はとりあえず保留、って事で、聞かなかったことにした。 「ふふ……待ってられるなんて言っちゃって、もうかなりの時間待っててくれたでしょ? 俺だって直樹には申し訳ないと思ってるんだ。感謝もしてる。心配しなくてももう大丈夫だからさ。だからそんな顔すんなって。ゴメンな……ちょっと意地悪した。あ、だからもう泣くなって!」 祐飛の言葉に、ホッとしたのと嬉しいのとで、なんだかもうよくわからない……俺は感情が昂りすぎて、そのまま祐飛を押し倒してしまった。 「祐飛……大好き、好き……好き。祐飛……好き」 夢中で祐飛の唇から首筋へキスを落とす。擽ったいのか、祐飛はケタケタと笑いながら、そんな俺にお返しと言わんばかりに沢山キスをしてくれた。 しばらくの間、二人してじゃれ合いながらキスをした。そして幸せなひと時を噛み締めてると、するっと俺の腕から祐飛が抜け出す。「シャワー行ってくるから待ってて」と、急に恥ずかしそうに顔を赤くしてそう呟き、部屋から出て行ってしまった。 ああ……そっか。 俺たちこれからエッチしようとしてたんだよな。 ただイチャイチャしてるだけでもいい気がしてくる。さっきまでリラックスしていたのが、これからする事に意識を向けたら途端に緊張してきてしまった。さっきの緊張ガチガチに逆戻りだ。 「……やべえ。どうしよう」 そわそわとどうしていいかわからずに、俺は一人でとりあえず着てる服を全部脱いでみる。 「………… 」 ベッドに潜り込み、素っ裸…… いやいや! 祐飛戻ってきて俺が既にすっポンポンじゃおかしいだろ! 慌ててまた服を着る。 ああ……どうしよう。俺一人で待ってらんない。 落ち着きなくまた服を脱ぎ、俺はパンツ一枚の姿でバスルームに向かった。

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