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初めての…③/祐飛の気持ち

バレンタインに直樹に告白された── すげえ今更だよな…… 何年越しだよ。直樹の気持ちはとっくの昔にわかってた事。高校を卒業して、ルームシェアするようになって、だいぶ距離も縮んだ。俺だって直樹のこと好きだったよ。大事な親友として、俺にとって直樹はなくてはならない存在だった。 何年も俺のことを好きでいてくれて、辛抱強く待っててくれた。そんな環境に居心地が良くて、自分の気持ちを認めるのもちょっと怖くて、でも「認めろ」と直樹にはっきりとそう言われて決心したんだ。愛してるんだと自分で認めた途端、今まで胸の辺りにふわふわしていたものがスッと本来あるべきところに落ち着いた感じがした。 いざ恋人同士になればやっぱりそういう雰囲気にもなるわけで、直樹には随分と我慢させてしまった自覚はある。でも「覚悟はできてる」なんて言ったものの、どうしてもあの時の記憶が蘇る。 直樹はこういう経験は無いはずだ。 勿論、直樹は俺のことを抱くつもりでいるのだろう。 直樹にとって初めての相手が俺なんだ。 俺だって、まっさらな気持ちのままで直樹に抱かれたかったよ……どうしても罪悪感が湧いてしまう。 初めてなのにすんなり直樹のことを受け入れることができたらどう思うかな。あの時以来、誰かに抱かれるなんてことはなっかったけど、きっと直樹に抱かれたら平常心でいられない。 罪悪感と、自分がリードした方が都合がいい気がして、俺は直樹のことを抱きたいと言ってみる。でも思った通りに否定されてしまった。 そうだろうな。 直樹が俺に抱かれるなんて、きっと夢にも思ってないよ。直樹の慌てっぷりと必死さがちょっと面白かった。 全く揶揄うつもりなんてなく、慌ててる直樹が面白くて引くに引けずに押し問答……でも直樹の機嫌が悪くなってるのもわかるから、もう諦めて直樹に委ねようと決心した。 直樹は結構すぐに泣く。でもきっとそれは俺のことに関してだけ。 直樹にとって、これからする事は泣くほど嬉しい事なんだよな。 ごめんな…… 俺、直樹と違って初めてじゃなくて。 俺があの時されていた事は、直樹は薄々わかってる。 今更取り繕ってみたところでぎこちなくなるのは目に見えてる。イチャイチャとこうしてる時間の方が幸せに感じた。 意を決して俺は先にシャワーを浴びに行く。これから直樹を受け入れるんだ。少しは準備しておいてやった方がきっといい。 緊張するのを深呼吸して落ち着かせ、俺は以前していたように体を綺麗にした。そんなに念入りにしなくてもきっと大丈夫。あんまり遅くて直樹が心配してもいけないし、早目に部屋へ戻ろう。 バスタブに体を沈め、後ろに手を伸ばす。少し解してから……なんて思った途端、バスルームのドアが開き切羽詰まった顔の直樹が乱入してきた。

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