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周&修斗 一泊だけの共同生活 ②
「何でまた戻ってくんだよ……」
玄関開けたら目の前に修斗がいた。
「何でもなにも、俺買い物行っただけだもん。てか、何? 周どこ行くの?もうバイト?」
よく見ると、修斗は何かを手に持っている。
「ああ……腹減ったしコンビニに」
俺が言った途端に修斗はその手に持っていた袋を俺に手渡した。
「行く必要ねえよ、俺が作ってやるからちょっと待ってろ」
そう言って修斗はまた俺の部屋にズイズイと入ってくる。
……なんだよ、これ弁当とかじゃねえのかよ。手渡された袋には、卵やらパスタやら、野菜や肉なんかも入っていた。
「もしかして修斗って料理とか出来んの?」
今まで修斗が料理したなんて一度も聞いたことがないし、普段の様子からは到底料理なんて出来るとは思えなくて俺はそう聞いた。
「へ? 簡単なのくらい普通に作れるでしょ。まあ周は何にもやらなさそうだけどな」
クスッと笑う修斗にちょっとバカにされた気もしたけど、まあいいや。
「台所借りるよ。さっき勝手に冷蔵庫見たけどろくなもん入ってねえんだもん。しばらく竜太君来てなかっただろ」
「……ああうん」
いつもは竜太が来る時に一緒に買い物したり料理を作ってもらったりしてる。竜太がいないときは、まあ適当に食べたり食べなかったり……
喋りながら意外にも手際よく修斗が調理を始める。起きた時に気がついたけど、米もちゃんと炊けていた。
「なあ、なに作ってんだ?」
ジュワッといい音が聞こえたから、修斗の背後からフライパンを覗き込む。すると驚いた顔をして修斗が振り返った。
「何だよ! びっくりすんじゃんか! お前デッカいんだから急に背後まわんな。ほら、すぐ出来っからあっち行ってろ」
修斗にケツで押しやられ、台所から追い出された。
腹減ったな……
でも言っていた通りにすぐに出来上がったらしく、修斗は二人分のオムライスを手に持っていた。
「……凄えな」
美味そうなオムライス。ちゃんと綺麗に整っていて、卵の上にはご丁寧にケチャップで「アマネ」とまで書いてあった。
「実はオムライスは得意なんだよね。康介がオムライス好きって聞いてからよく作るようになったんだよ」
「へえ、康介子どもっぽいの好きなんだな。で、康介にはケチャップでハートとか書いちゃうの?」
揶揄うつもりでそう言ったんだけど、修斗は真面目な顔をして首を振った。
「康介には作ってやったことねえよ……お互い実家暮らしだしメシ一緒に食う時はだいたい外食だもん。あ、たまに康介の母ちゃんのメシはご馳走になるけど」
「ふうん……せっかくこんなに旨いのにな」
俺はオムライスをひと口味わう。得意と言ってるだけあって、本当に旨かった。
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