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周&修斗 一泊だけの共同生活 ⑤

「うまかった! ご馳走さん。あ、俺が片付けるからいいよ。ゆっくりしてな」 俺は洗い物を運ぶ修斗に声をかける。 「ん、サンキュ。じゃあ俺もシャワー借りんね」 「は? まさか泊まる気?」 ハハ……って笑いながら風呂場へ消える修斗に溜め息を吐く。 ま、しょうがないか。そんな気はしてたから、驚くようなことじゃない。 洗い物を済ませ俺はソファに座る。テレビをつけると同時に、携帯がピコンとメールの着信を伝えた。合宿中の竜太から「おやすみなさい」の定期連絡。帰ってくんのは明日だっけ? 明後日だっけ? 終わったらすぐうちに来てくれるって言ってたから楽しみだ。竜太と会えるのもしばらくぶりだから早く会いてえな。とりあえず竜太を煩わせないように、俺も簡単に「おやすみ」と返信をした。 「ん? 竜太君から?」 唐突に背後でそう言う修斗に驚く。 「いつの間に出てきたんだよ……ってスウェット持参かよ、準備いいな」 「はじめっから泊めてもらう気でいたし、周の服借りたら竜太君嫌でしょ? ちゃんとお泊まりセット持って来たから安心しろ」 俺の座る隣に腰を下ろし、ちゃっかりと冷蔵庫からビールを持って来た修斗は俺にも一本手渡した。 「とりあえず、お疲れちゃん」 プシュっといい音を立て何となく二人で乾杯をする。一口だけ飲んだ修斗が徐に話し出した。 「なあ、周は竜太君と喧嘩とかしないの?」 「……なんだよ、突然だな」 竜太と喧嘩か。はっきり言って殆ど無えな。あれ? 俺が覚えてないだけか? 「あんま喧嘩はしないな。竜太は穏やかな性格だし、たまに怒られるようなこともあるけど、それは俺が悪い時だし……嫌なことあっても竜太は我慢するタイプだろ? 俺はそういうのあんま好きじゃねえけど、こういうのは性格だからな。まあ喧嘩っぽくなっても竜太が可愛いから本気で怒れないし?……なんで? 康介と喧嘩でもした?」 「………… 」 図星だなこりゃ、と修斗の顔を見る。 「いや、喧嘩ってほどのことじゃないんだけど。売り言葉に買い言葉……みたいな?」 俺が知ってる限り、こいつらはしょっ中しょうもない事で喧嘩をしている。竜太に言わせりゃ「喧嘩するほど仲が良い」らしいけど。俺にはよくわからねえ。 「俺さ、最近仕事変わったろ? それで社長にSNSをやれって言われて……そう、プライベートのじゃなくてモデルとしてのな。それが康介には面白くないみたい」 そういや同じ事務所の志音はそういうのやってないんじゃね? そう思って修斗に聞いたら、志音はそういうのは苦手だからやらないんだと。 「それに志音はモデルだけだけど、俺はモデルもだけどいずれは敦さんみたいにタレントとしてテレビとかの仕事をさせていきたいから、だからどんどん世間様に知ってもらわないとって……」 「へえー、そうなんだ。でも康介うるさそうだな、てかまたいじけるんじゃね?「俺なんかが修斗さんと付き合ってていいのか」なんて言い出しそう。あいつめんどくせえもんな」 康介はヤキモチ妬きでおまけにスーパーネガティブ。竜太が康介の心配をしている図が目に浮かんで、俺はうんざりした。 「女の子のフォロワーばっかで俺が調子のいいことばっか言ってるって、顔合わせりゃいつも文句ばっか……しょうがねえじゃん? 駆け出しの俺についてくれてる唯一のファンの子にちょっとリップサービスしたっていいじゃん。それにシャレだってみんなわかってるしさ。いちいち心配しすぎなんだって……」 とりあえず、思った通りたいしたことない話で安心した。いつもの喧嘩な。 「でもさ、康介だって酷いんだよ! 最近のあれ、周も見ただろ? 康介の方が問題だよ! 俺のこと言えねえよ」 ああ、確かに…… 修斗の言いたいことはすぐにわかった。 康介本人は何を目指してるのか、ちょっと面白いから俺は静観してるけど。あれは修斗が怒るのも無理ないわな。

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