ちょっとこれは言いすぎたかな？ 康介がこんなに怒るとは思わなかった。 だって最初に怒ってイラついてたの康介の方じゃんか。俺が悪いの？ 俺が臨時ボーナスでおそろの靴買ってやったらコロッと機嫌直しやがって。それにすぐラブホ行きたいなんてさ……なんか嫌じゃね？ だから俺聞いたのに。勿論康介が俺のことセフレとか思ってるわけないってわかってるけどさ、言いたくなっちゃったんだもんしょうがねえじゃん。 俺のことずっと無視するなんてムカつく。 いつもなら「愛してる」とか「ごめんね」とか言ってくれるのに、いつまでも康介が怒ってたら仲直りできねえじゃん。俺、どうしたらいいのかわかんねえ…… さっきから俺のこと無視して弁当まで一人で食べ始めた。ここまで康介に無視されるの慣れてなくて、寂しくなってくる。何て言ったら機嫌なおしてくれっかな。俺はどうしたらいいんだろう。 「ねえ、康介ってば……」 「………… 」 声をかけてみるも知らんぷり。黙々と弁当を食べきった康介はいつものようにビニールにゴミを入れると徐にそれをポイっと投げた。でもそのゴミは近くの壁に強くぶつかり派手な音をたてるもんだから、思わず驚いた俺はビクッと体が強張った。 そんなに怒ることねえじゃん。 相変わらず俺に背を向けてる康介の背中を見つめる。ジッと見ていたところで振り返ってくてるわけでもなく、しょうがないから俺も買ってきたおにぎりを食べる事にした。 一人で食っても全然美味しくないしつまんない。 康介が立ち上がり、俺の方を見もしないでバスルームに行ってしまった。 シャワーの音が小さく聞こえる。いつもならこれからする事を考えてドキドキするこの時間も、今日は全然ドキドキしないし居心地が悪い。何ならこのまま帰ってしまおうか……なんて考えも頭を過ぎった。でもそんな事したら益々収拾がつかなくなるってわかるから。これ以上康介を怒らせたくないし、何よりもう傷つけたくない。 こんな事でダメになんかしたくない。康介に嫌われたくない。康介がこんなに怒ってるのは俺の一言が原因だってわかってるよ。 でもどうやって謝ろう…… 康介は喜怒哀楽がわかりやすい。 素直になるのが苦手なのも知ってる。それでも喧嘩した時なんかは、いつも俺に合わせて康介の方が素直になって謝ってくれるんだ。 俺も素直じゃないのを知ってくれてる。 それなのに、今回は折れてくれない…… シャワーから出てきた康介と目が合った。その冷たい視線に居た堪れなくなった。 今回は俺がちゃんと謝らないとって、そう思ってベッドに潜り込んだ康介の背後に俺も潜る。触れてくれないから自分から康介に触れに行く。 自分からちゃんと謝ろうって思ってるのに言葉が出ない。出ないどころか代わりに余計な言葉が口から漏れる。いつもみたいに康介の方から「ごめんね」って言ってもらいたくて強請ってしまう。安心できる言葉が欲しくていつもの調子で吐いた言葉がまた康介を怒らせてしまった。