191 / 210
意地悪なのは…⑤/怒ってる
完璧に怒らせた。
「ごめん! そんなつもりで言ったんじゃない……ねえごめんね。康介。許して……ねえってば……」
俺はすっぽり布団をかぶってしまった康介を後ろから抱きしめる。いくら謝っても俺が騒いでも何も言ってくれない。
(……は? なら周さんと付き合えば?)
何でそうなる? そういう事じゃない。突き放されたようで、凄くショックだった。どんどん康介との距離が開いてく気がして、でも喋れば喋るほど更に怒らせてしまう気がして、焦った俺はもうなんて言ったらいいのかわからなかった。
……お手上げ。
「康介……」
俺は背中からギュッと抱きつき康介の体に腕を回した。スケべな康介ならそういう雰囲気に持っていけばあやふやになって機嫌も良くなるかな……って思って、わざとイヤラしく康介の下腹部に手を伸ばす。
「いい加減機嫌なおしてさ……ごめんね。俺が悪かったって……ねえ、しないの?」
勿論俺が悪かったし反省してる。でも、シャワーを浴びた康介にくっ付いていたらどうしてもエッチな気分になってしまう。いつもならガッついてくる康介がこんなんだから、たまには俺から強請ってみてもいいよな? 康介の機嫌を直したいのもあるけど、久々に康介に触れて……俺だって早くエッチしたい。
「ねえってば……」
石鹸の匂いといつもの康介の匂い。
Tシャツにパンツ姿の康介に、後ろから抱きつきながらTシャツの中に手を忍ばせる。
引き締まった体。
最近鍛えてカッコよく割れた腹筋、早く見たいな……
ちょっとだけ汗ばんだ肌。俺が指先で腹を撫でたらピクって反応した康介の耳元に、わざと誘うように息をかける。
「エッチ……しよ?」
俺から誘うのだって滅多にないんだぞ。でもこれで仲直りできると思った俺が甘かった。
「……?」
俺の手をシャツの上から康介が握る。その握る力が強くて声を上げてしまった。
「何だよ! 痛えよ……離せって」
「……触んな」
顔は見えないけど、今まで聞いたことのない康介の冷たい声。ハッとして俺は康介の体から手を離した。
「ごめん」
「しないよ? そんな気分じゃないし。俺、怒ってんのわかんねえの?……修斗さん、バカなの?」
……俺、先輩なんだけどな。
康介にバカ呼ばわりされた。ムカついたけどそれ以上に本気で怒ってる康介が怖かった。
康介だってそりゃ怒るよな。俺が相手だから今まで遠慮してたのかもな。
こんなに怒るんだ。よっぽど嫌だったんだよな。このまま終わってしまうかもしれない恐怖。俺のこと、あんなに好きだった康介がこんなに怒ってる。
顔すら見てくれない。触るのも拒絶された……
やだ……
俺、フラれんの嫌だし!
俺が康介から少し離れると、やっと振り返りこっちを見てくれた。首だけ俺の方向けて、相変わらず体は布団に包まったままだけど。
「………… 」
……何?
康介の視線、下の方。
「修斗さん、何勃たせてんの? こんな時に興奮してんの?」
冷たい視線に慌てて俺は手で股間を押さえた。
しょうがねえじゃん。したくなっちゃってんだもん。でも康介の顔……怖い。
「そっか。修斗さんドMだもんね。イジメられんの好きだもんね」
「べ、別に好きじゃないし!……ほんと、康介ごめんって。機嫌直せよ」
ムクッと起き上がった康介は、ちょっと嫌な顔をして俺を見る。じっと見られて何だかドキドキしてしまった。
「どうしたい? エッチ、したいの? 修斗さん。いやらしいこといっぱいされたい?」
クソ……康介のくせに、主導権握られそうで悔しい。
でもここは素直になった方がいいよね?
「……うん。康介早くきて」
凄え恥ずかしい。俺の股間を見つめる康介の視線にドキドキする。そこに熱が集まってくるのがわかる。見られてるだけなのに勃たせてるなんてどんだけだよ俺。
でもやっとこれで仲直りできる。
スッと俺に近づく康介に息が上がる。キスしてくれるかと思って、嬉しくなって少し顔を上げたら目の前にきた康介がクスって笑った。
「そんなにしたけりゃ自分ですれば?」
ともだちにシェアしよう!