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僕らの卒業旅行 ②

僕らの住んでいる町から目的地まで、車で三時間くらいってところかな。途中休憩を挟みながら、順調に目的地に近づいてきた。さっきまで騒がしかった直樹君は祐飛君に寄りかかって寝ちゃってるし、康介は修斗さんと楽しそうにお喋りをしている。周さんは行きも帰りもずっと運転。なるべく無理をさせないように僕から多めに休憩を提案した。 「あと三十分もしないうちに到着できそうだな」 最後の休憩を終え、出発してすぐに周さんがそう言った。予定より少し早めに到着できそうだったけど、高速道路を降りてからはどんどん山の方へ進みすっかり山道に入ってしまう。どうやら目的の宿はこの山の中腹にあるらしい。 「………… 」 「……? 竜太、どうした?」 いつまでもくねくねと続く山道、僕はすっかり酔ってしまった。 「気持ち悪い……かも」 窓を全開にして風に当たる。なるべく遠くを見たり、やっぱり目を瞑って寝ようと試みたり、何とか気持ちを紛らわせていると ふと車が停まった。 「ちょっと休憩な。別に急ぐこともねえし」 さっと車を降りた周さんが助手席のドアを開けてくれた。 「大丈夫か?」 心配そうな顔の周さんが僕に手を差し出してくれる。そんな大したことはないのに、気を遣ってくれるのが嬉しくて僕はその手をぎゅっと握った。 「ありがとうございます。大丈夫ですよ……って、うわあ! 凄い景色!」 山道の途中にある、車五台ほどのスペースのある小ぢんまりとした展望台。車を降りた僕は目の前に広がる景色に思わず声をあげた。後から他のみんなも降りてくる。直樹君はまだちょっと眠たそうだけど。 「すっごいね! さっきから見るとこ見るとこ木ばっかりでつまんなかったけど、眺めいい〜」 修斗さんは康介と手を繋いで柵から乗り出し見渡している。相変わらず修斗さんの高所恐怖症の基準がよくわからないけど、きっと康介がいれば大丈夫なんだろうな。 「そうだ! せっかくだからここでも集合写真撮りましょ! ね? 俺ちゃんと持ってきたよ、三脚! 待ってて、取って来るから!」 しばらくの間各々景色を楽しんでいたら、唐突に直樹君が大きな声をあげ大慌てで車に戻って行った。得意げに三脚を振り回しながら戻り、そして褒めてと言わんばかりに祐飛君の顔を見た。そういえばさっきパラパラと見た直樹君特製旅のしおりに「ホテルの前で記念写真」とも書いてあったっけ。直樹君の作ったしおり、結構細かくスケジュールが書いてあったのがちょっと意外だった。康介みたいな大雑把な性格なのかと思ったけど、案外几帳面なのかもしれないね。 「ん〜、もうちょっと寄ってください。うん、そんな感じ……あ、康介君、修斗さんともうちょっとくっついても大丈夫だよ。うんうん、その辺。俺は祐飛の隣に入るから場所あけといてね。周さんも笑ってよ。聞いてる? 怖い顔だめですよ!」 カメラの位置を調節しながら直樹君は全員が写真に収まるよう僕らに細かく指示を出す。さながらカメラマンだ。 ベストポジションが決まり、タイマーをセットした直樹君が楽しそうにオーバーリアクションでシャッターを押す。急いで自分の位置に落ち着こうと走ってきたけど、修斗さんが意地悪して祐飛君の肩を抱くもんだから、居場所のなくなった直樹君一人だけ変な格好で最初の記念写真に収まった。

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