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僕らの卒業旅行 ⑤
旅行二日目──
周さんの運転するレンタカーに乗っているのは僕ら男だけ、そして朝からとっても賑やか。朝食を済ませ早速向かっているその目的地はあの有名な……
「恋人岬!」
「なんでまた!」
「男だけで?」
後ろの座席で修斗さんと康介がふざけて掛け合いをしている。ちなみに周さんは無反応。このプランを考えた直樹君は揶揄われていると思ってさっきから機嫌が悪い。
「うるさいな……有名じゃん。景色だって綺麗なんですよ? 話のネタにいいじゃんか。それにほら…… ちょっとロマンティックだし……」
「うきゃー! ロマンティック!」
「ロマンティック!」
「うるさい! 笑うな! 修斗さんも康介君もしつけえよ! もうっ、ムカつく! 行きたくなけりゃ違うとこでもいいし……」
段々可哀想になってきた。
恋人岬ってカップルで行かないとダメってわけじゃないんだし、直樹くんの言う通りハイキングや景色も楽しめるんだし、いいじゃん。それに僕らを思って直樹くんは恋人岬をチョイスしてくれたんでしょ?
「修斗さんも康介も、いい加減やめましょ。直樹君、ありがとうね。僕は恋人岬、楽しみだよ」
「ああ……竜太君は優しいなあ。俺、優しい竜太君が大好きだ……」
直樹君は大袈裟に溜息を吐きながらそんなことを言うから、運転している周さんが後ろを振り返り直樹君に怒鳴った。
「大好きとか言ってんな! 竜太は俺のだ!」
「周さんっ! 危ない、ちゃんと前見て! もう、いちいちそんな事で反応しないでください」
運転中だっていうのにまったくもう。そんな周さんも好きなんだけどね。
宿泊しているホテルから一時間ほどで目的の恋人岬に到着する。まだ早い時間なだけあり、然程混雑もしていない。車を停め、僕らは入り口に向かってぞろぞろと歩いた。
「ねえ見て見て! これ凄いね! 俺らも記念にやる?」
少し先を康介と歩いていた修斗さんが僕らを振り返り楽しそうに手招きをする。遊歩道に差し掛かる手前に柵のようにずらっと並んでいたのは数々の絵馬や南京錠。思い思いに言葉が書いてある。どれもこれも恋人同士が愛を誓う文言ばかりで、見ていてちょっと恥ずかしいくらい。
「こんなん書いちゃって別れたら恥ずかしいよね」
「そもそも別れるつもりなくて書いてるんじゃないですか? おめでたいな」
「これだけの中、どのくらいのカップルが結婚してんだろうね」
修斗さんと祐飛君が一つ一つ絵馬をめくりながら話してる。僕も目に止まった絵馬を手に取り「永遠LOVE!」なんて大きな字でカップルの名前が書いてあるのを見て若干引いてしまった。それでもきっとこれを書いていくカップル達は真面目に愛を誓ってるんだ。僕らが馬鹿にしていいものじゃないよね。
「竜太君、こういうの好きそう。周と名前書いてく? いいよ、待っててあげるから」
修斗さんに肩をポンと叩かれる。別にこういうの好きじゃないし。でもせっかくだから記念に何かしたいな。僕は絵馬等が売っているという売店へ行ってみたいと周さんの服の裾を引っ張った。
「マジか? 本当に絵馬書くの?」
売店に向かう僕らの後を面白そうに修斗さん達がついて来る。書く書かないは別にして、とりあえずどんなのがあるのか見て見たいじゃん?
「そんなこと言って、本当は修斗さんも興味あるんじゃないですか? 康介も満更でもないみたいですよ」
「いやいやいや、満更でもあるっつーの! 俺はこんな恥ずいのやだかんな! ……ま、まあ修斗さんがどうしてもって言うなら? 書いちゃってもべ……別にいいけど」
ほら、康介だって気になってるんじゃん。少しからかったら耳まで赤くして康介は修斗さんの後ろに隠れてしまった。
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