147 / 210

僕らの卒業旅行 ⑫

「急に何してるんですか。皆んなが戻ってきたらどうするんですか、もう……周さんにそんな風にされたら……僕だって、その……変な気分になっちゃうでしょ」 もう一度、今度は周さんの頬にキスを落とす。そんなこと言ってさ、本当は僕だってもう変な気分になっちゃってるんだ。 「でもよ、竜太だってもうこんなんなってるぞ?」 「あっ!」 グッと周さんの手が僕のそこを掴んでくる。周さんはここぞとばかりに僕の股間を弄りながら耳元に顔を埋めるから、もう変な声が出ちゃってどうしようもない。いくら僕がダメだと言ってももうこうなっちゃったら止められないよね。 「あ……周さん、じゃあせめてトイレ……で」 あぁ、何言っちゃってるんだろう僕は。 僕の言葉に周さんは黙ったまま立ち上がり、無言で僕の腕を掴んで強引気味にトイレに押し込み、息を乱して乱暴にキスをした。 いつもとちょっと違う、乱暴な周さんにゾクゾクしてしまう。それでもいつ誰が戻るともわからないこんな所で最後までなんかできないから…… 「周さん……」 「わかってる。抜くだけ……な?」 忙しなく周さんがベルトを外し、僕のズボンにも手をかける。そのまま二人で触り合い、気の済むまでキスをした。 「………… 」 「……ごめんって康介」 うっかり夢中で僕らは康介が戻ってたことなんてちっとも気がつかなかったんだ。おまけにトイレに入ろうとドアまで開けてしまったらしい。事を終え、二人でトイレから出たら凄い顔をした康介が仁王立ちで待ち構えていたから心臓が飛び出るほど驚いた。 「信じらんねぇ。発情期かよ……せめて鍵閉めるとかできんだろ。バカなの?」 ……悔しいけど言い返せない。でも周さんは「お前に言われたくねえよ」と突っかかっていた。 「びっくりだし恥ずかしいし! トイレ開けたらおもっきし周さんの尻が目に飛び込んでくるし! ほんっと俺でよかったよ! ……周さんひとつ貸しですからね」 「はぁ? 貸しってなんだよ、そんなんどうでもいいし! 康介うるせえよ、いい加減黙れ」 去年といい、またしても凄い恥ずかしい失態。でも康介で本当よかったと思う。見られたのが直樹君や祐飛君だったらと思うと目も当てられない。 「竜の尻ならまだ可愛げがあるってもんが……なんで周さんのケツ……」 「ああ? お前! 何竜太の尻見ようとしてんだよ! お前なんかに見せねーよ!」 「おい! 誰が竜の尻を見たいって言ったよ! 日本語! わからないんですかー?」 なんで僕のお尻の話で揉めてんの? もうやだ……恥ずかしすぎる。 周さんと康介の言い合いが段々ヒートアップしていき僕が慌てて止めに入ると、何も知らない修斗さんも部屋に戻ってきた。 「どうした? 康介遅いから心配しちゃったよ。財布見つかんねえの?」 「あ、そうだった。ごめん修斗さん。ちょっとハプニングで……」 チラッと僕の顔を見た修斗さんに「顔が赤いよ」と指摘される。僕は何も言ってないのに「また周がごめんね~」と笑いながら康介と部屋から出て行った。 「あの修斗のなんでもお見通しって顔、ムカつくな」 「………… 」 恥ずかしさと情けなさとで何も言えないでいると、周さんが心配そうに僕の顔を覗き込む。 「竜太ごめんな、俺が悪かった」 「周さんのせいじゃないです。僕だって我慢できなかったんだから。ごめんなさい」 気分が落ち込んでしまった僕を慰めるように周さんが抱きしめてくれた。そんなところにタイミング悪く今度は直樹君が部屋に戻ってきて、これでもかってくらい大慌てで部屋から出て行ったのでほんと見られたのが康介でよかったと心底思った。

ともだちにシェアしよう!