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僕らの卒業旅行 ⑬

夕飯を終え、今夜も昨日と同じに布団に入る。流石に疲れたのか、周さんはあっという間に寝息を立てていた。やっぱり僕のスペースを空けて凄い端っこで姿勢良く眠っている、そんな周さんが愛おしい。僕は周さんに心の中で「お疲れ様」と声をかけ、肩まで布団を掛けてあげた。 寝るのにはまだ早いから皆んなとお喋り。この旅行のことや僕と康介の卒業後の話とか、他愛ない話で盛り上がる。そろそろ僕も眠たくなってきたな……と和室に戻ろうとしたら、直樹君に呼び止められてしまった。 「あ……竜太君は、周さんとはどのくらい付き合ってるの? きっかけは?」 眠たくなってきたのも嘘ではないんだけど、修斗さんがどうにも恋愛話にもっていこうと話し始めたのがわかったから、周さんも寝ちゃってるし僕は遠慮しようと思ったのに、結局逃げられずに捕まってしまった。 「竜太君が一年生の時だよね。入学して結構すぐ? もうさ、周が強引でね〜、あの時はびっくりだよね」 「付き合う前にもうキスされてんだもんな。俺うっかり見ちゃってびっくりしたの忘れらんねぇ……てか今日といいそんなんばっかだな俺」 康介まで余計なことを言う。 「でもホントさ、竜と周さんって仲良いよな。喧嘩とかしねえだろ?」 些細な喧嘩はするけど、基本的に周さんが優しいから喧嘩らしい喧嘩はしないかも。 「別に見せつけてるとかじゃなくても仲良いのよく分かるし、男同士なのに堂々としてるのがなんかいいな〜って俺、憧れます」 直樹君までそんなこと言って…… でも僕が陽介さんと圭さんに憧れを抱いていたのと同じ風に思ってくれてるのなら、こんなに嬉しいことはないかもしれない。 「竜太君が優しくて素直だから周みたいなどうしようもない奴でもうまくやってけるんだよ。お互いベタ惚れだもんな」 「どうせ俺は素直じゃないし優しくないですよ。修斗さんだって竜の素直さ見習えばいいのに」 「は? 俺は康介にベタ惚れだよ。康介だって優しいじゃん。俺の事大好きでしょ?」 「ちょっ……やめて、急に恥ずいこと言わないで!」 康介と修斗さんがいつもの調子でじゃれあい始める。僕と周さんの事、仲良しだって言うけど、この二人だって相当仲良しだと思うけどね。僕が考えてることが伝わったのか、直樹君も祐飛君も顔を見合わせて頷いていた。 それにしても、こういうのは周さんのいない所で話すのはちょっと気が引ける。結構騒いでいるのに起きてこない周さん。ちょっと寂しくなってきちゃった。お喋りするなら周さんも一緒がいい。 でもそう、もう周さんと付き合って三年になる。周さんが卒業して寂しがってる暇なくあっという間に僕も卒業を迎えてしまった。 「高校生ってあっと言う間ですね……」 周さんと付き合うようになってから、時間が経つのが早く感じる。でも周さんやここにいる皆んなとはこの先もずっとずっと仲良く一緒にいるような気がした。 僕らはどんな大人になるんだろうな…… 「あれ? 竜太君眠い? ごめんね、そろそろ寝よっか」 ぼんやりと考えてたら眠たそうに見られたのか、修斗さんのひと言でお喋りはお開きになった。 相変わらず姿勢良く眠っている周さんの隣に潜り込む。僕の気配に気がついたのか、周さんはもぞもぞと僕を捕まえ寝惚けながら顔をすり寄せる。可愛いなぁって僕も寝ている周さんに抱きついて眠った。

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