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頼りになるのは……①

急遽靖史さんの酒屋の配達手伝い。そしてまたいつものように親父さんに捕まって少しだけ呑んで帰った。結構ヘトヘトだし、ここ数日竜太とも会えてなかったから、こればっかりはしょうがない。八つ当たりとかじゃなくて、単純にコイツがこにいるのが悪いんだ。 「ふざけんなてめえ! 離れろ!」 アパートに帰ってみると人の気配。きっと竜太が来たんだって思ってウキウキしながら寝室のドアを開けたら、俺のベッドで寝ている竜太と、そのベッドに突っ伏して寝ている康介の姿が目に飛び込んで来た。なんで康介? って思ったのも束の間、コイツは事もあろうに竜太の手を握ってやがった。 わけわかんねぇ。 だから問答無用で蹴り飛ばしてやったんだけど、飛び起きた康介は慌てた様子で俺に飛びつき手で口を塞いできた。 「ちょっと! 静かに……せっかく寝たのに竜が起きちゃうだろ!」 コソコソっとそう言うと、相変わらず静かに横になってる竜太を振り返る。 「周さん、遅かったっすね」 康介は俺に蹴られた脇腹を摩りながらそう言うと、竜太は熱を出して眠っているんだと教えてくれた。 「あと、暴力反対!」 「あ……悪い」 帰る途中で買ったのか、竜太の額には冷えピタが貼ってある。最初こそ息も荒くてしんどそうだったけど、ついさっきようやく落ち着いて眠ったらしい。 「講義終わって竜迎えに行ったら見るからに様子がおかしいし熱あるし、フラフラしてるから慌てて家に連れ帰ったんですよ。でも竜の母ちゃん留守だし竜は周さんに会いたいってベソかくし、しょうがねえからここに連れて来たんだよ。昔っから竜は熱出すと甘えたになるからさっきみたいに手ぇ離してくんねえしさ、俺凄え頑張ったのに……なんでまた周さんに蹴っ飛ばされなきゃなんねえの?」 「しょうがねえじゃん、お前が竜太の手握って寝こけてんのが悪い」 「だから! 俺じゃなくて竜がね? 竜が俺の手握って離さなかったの!」 なんだよ…… 熱出すと甘えたになるなんて俺知らねえし。いつも俺の前じゃ竜太元気だし。 でも康介がいてくれてよかった。 「ありがとな。あとはもういいから」 「うん……竜のやつ、しばらく周さんと会ってなかったから今日は自分が飯作って待ってるんだって朝言ってましたよ。まあこんなんじゃ無理だろうけど……」 竜太の飯が食えなかったのは残念だけどしょうがない。そんな事より早くいつもの元気な竜太に会いたかった。 「あ……それと俺の手握りしめながらずっと周さんって名前呼んでましたよ。超可愛い」 事情がわかればもう俺の頭の中は竜太のことでいっぱいで、康介が何か言ってるのも全く耳に入ってこなかった。

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