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頼りになるのは……②

気がつけばもう康介の姿はなかった。いつの間に帰ったらしい。 竜太は相変わらず静かに眠ってる。 可愛い寝顔……なんてしばらく見とれていたけど、看病って何すりゃいいんだ? 着替えさせたり体拭いてやったりするんだっけか? でも気持ちよさそうに寝てんのにわざわざ起こすこともねえよな。汗だってかいてねえんだし。 「あっ! 飯は?」 そうだ、病人っつったらお粥じゃねえか! それ作ってやって竜太が起きたら食わせてやればいい。 俺はやっと自分が今するべきことを思いついて張り切って台所に向かった。竜太起きたら驚くかな? ふーふーしてやって俺が食わせてやるんだ。 「確かこの辺に……」 以前、湯豆腐とかうどんなんかを食べるのに便利だからと言って、竜太が買っておいてくれた小さめな土鍋。まだ使ったことはなかったけど、竜太がここにしまってるのを思い出して、俺は土鍋を取り出しコンロに乗せる。 「………… 」 土鍋はお粥を作るのには丁度いいんだけど、ところでお粥ってどう作るんだろう。米と水入れて煮ればいいのか? 炊いた米? 炊く前の米? 水はどんくらい入れればいいんだ? あれ? お湯から? 「わっかんねー」 とりあえず炊飯器には今朝食ったご飯の残りがちょっと入ってる。お粥っつったら柔らけえご飯だよな? とりあえずなんとかなるだろうと、俺は残りご飯と水を土鍋に入れて火にかけた。 ひとまずバイトで汗かいてたし、竜太寝てるうちにシャワーを浴びておこう。俺はコンロの火を弱火にしてシャワーを浴びる。どのくらいの時間火にかければいいのかよくわかんなかったし、とにかく柔らかくなりゃいいんだよな……って思ったから、長く火にかけとけばいいんだと思ったんだ。そして頭も洗ってすっきりして部屋に戻った時にはもう手遅れだった。 「げ! なんだ? 焦げ臭くね?……いや気のせいか?」 香ばしい匂いは気のせいなんかじゃなく、さっき火にかけた土鍋から焦げ臭い匂いが出てるのは一目瞭然。 「うぉっ? アッチィ! クソっ」 慌てて土鍋の蓋を取ったら、熱さに驚いて蓋を落としてしまった。 最悪だ…… 蓋は足元で真っ二つになってるし、指は痛えし、何より土鍋の中身が見るも無残。目の前の惨状に呆然としていると寝室から竜太の咳き込む声が聞こえた。 「あ……あれ? 周さん……? ゴホッ……コホっ……」 やっべ、起こしちまった。 俺は寝室に入ると竜太に声をかける。咳き込む姿がしんどそうに見え、心配になった。 「大丈夫か? まだ寝とけ。気持ち悪くね? 水、飲む?」 「……うん、水、飲みたい。周さん……ありがとう」 赤い顔して汗ばんでる竜太がちょっと色っぽく見えて、慌てて俺は部屋から出た。こんな時に俺ってばムラムラしてんじゃねえよ。コップに水を入れ、竜太に飲ませてやると、また静かに眠ってくれた。

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