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頼りになるのは……③

さて…… 変な色になってる土鍋のご飯。柔らかご飯なんてもんじゃなく、水分はなくなってるし杓文字でほじったら底の方は真っ黒だった。 「酷ぇな……」 割れた蓋を拾い、焦げてしまった土鍋を片付けようと持ち上げたら、ガコッて音とともに鍋の底が抜けた。散々な状態にひとりで思わず笑ってしまう。 「お粥……どうすっかな」 考えたって何も思いつかないから、俺は修斗に電話をかけた。 仕事中か? なかなか出ない修斗にイラッとしてたら「はいはーい」とダルそうな声で出るもんだからキレそうになる。 「なあ、竜太が熱出した!」 「へえ、大変だね。大丈夫?」 大丈夫なわけねえだろ。電話口がガヤガヤしていて少し聞き取りにくい。だから余計にイラついてしまった。 「大丈夫じゃねえから電話してんだろうが。粥! 竜太に粥食わせんだ! 作り方教えろ!」 「は? お粥なんてコンビニで買えばいいじゃん。てかお前、料理なんて壊滅的にできないくせに何で自分で作ろうとすんだよ。ボヤ出す前にやめとけって」 「………… 」 修斗に土鍋が焦げて底が抜けたって話をしたらめちゃくちゃ笑われてしまった。 「自分で作って食わせてやりたいって気持ちはわかるけど、素直にコンビニで買ってチンして出せよ。でも無理に食わせんなよ? 食欲ねえのに食わせる必要ないからな。飯より水分、ポカリとかあるだろ? 脱水症状起こさねえように水分気をつけてやりゃ大丈夫だよ」 「うん……わかった。ありがとう」 修斗は「お大事に〜」と軽く言うと、さっさと電話を切ってしまった。仕事中だったのかもしれねえな。今度会ったらちゃんと礼を言おう。 ポカリは確か冷蔵庫に入ってたはず。無理に食わせることねえって言ってたけど、もし目が覚めて腹減ったなんて言われたらすぐ食わせてやりたいから、今からコンビニ行くかな。俺は寝室のドアを開け、竜太の様子をそっと見る。静かに眠ってるけど一応声をかけておくか。 「竜太、ちょっとコンビニ行って来る」 まあぐっすり寝てるし声かけたって聞こえちゃいないだろうけど……なんて思ってすぐ玄関に向かったら、寝室から竜太の呼ぶ声が微かに聞こえ慌てて戻った。 「どうした? 呼んだ?」 竜太はベッドに潜り込んで顔が見えない。俺が近づくと、パッと布団から顔を出す。汗びっしょりな額に思わず手をやった。 「周さん……行っちゃやだ」 力なく俺の腕を掴む竜太。こんな状態の竜太を置いて出かけられるはずもなく「行かないよ」と、泣きそうになってる竜太を俺は宥めた。 俺の手を掴んだまま、半分朦朧としている竜太。とりあえず酷く汗をかいてるから着替えさせようと服を脱がす。私服のまんまだったから寝心地悪かっただろうな。康介の奴、そのまんま寝かせやがって気が利かねえな。でも竜太の着替えを康介がやってたとしてもムカついてただろうからいいや。 「竜太、ちょっと起きられるか?」 上半身を支えてやり、シャツのボタンを外し始める。クタッとしている竜太の熱い息が俺の手に当たる。しんどそうだな……って思って竜太の顔を伺い見ると目が合った。 「……っ」 「ん? なんだ?」 ふふって笑って竜太が何か言った気がしたけど声が小さくてよく聞こえなかった。少し顔を近づけてみると、チュっていきなりキスをされた。

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