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頼りになるのは……④

「……周さんのえっち」 俺にキスして、したり顔の竜太が可愛い。せっかく俺がボタンを外してるのに覚束ない手でまたボタンをつけようとしている。 「ちょいちょい待てって、ほら竜太、汗かいてっから着替えるぞ。体、拭いてやるから素直に脱いで。あっ、違うって、着るんじゃなくて脱ぐんだよ」 自分の状況がよくわかってないのかな。竜太はふわふわっと笑ってなんだか楽しそうだ。なんとか上半身裸にしタオルで拭こうとしたら、なぜか慌てて両手で胸を隠した。 「やーだぁ。僕エッチなことしないから! 触っちゃダメ」 「………… 」 ダメだ。わかってねえなこりゃ。 子どもみたいになってる竜太に苦戦しながら、体を拭いてやりズボンも脱がせる。時折俺に抱きついてきたりキスしてきたりするもんだから、変な気にならないようにするのが大変だった。クソ……後で覚えとけよ。 バタバタとなんとか俺のスウェットに着替えさせると竜太は疲れたのか、また横になってスヤスヤと眠ってしまった。 「……疲れた」 しばらくは起きねえだろうな、と思い、今度こそコンビニに向かう。それでも目が覚めた時に俺がいなくて不安にさせないようにと、猛ダッシュで買い物を済ませた。 レトルトの粥と竜太の好きなアイス。竜太が選べる方がいいと思ってバニラとストロベリーとチョコを買った。俺も腹が減ったし軽く食えるように菓子パンも買った。部屋に戻ってもさっきと同じ姿勢で竜太は寝ている。熱、下がったかな。目覚ましたら元気になってるかな。とりあえずリビングに戻り俺はパンをかじった。 「周さん……なんか、あの……ごめんなさい」 リビングでボケっとしてたら寝室から竜太がふらふらと起きてきた。俺のくたびれたスウェットを着せちまったから、サイズが合ってなくてあちこちダボダボしている。 「もう大丈夫か? 腹減ってね?……無理して起きてこなくていいんだぞ」 あんま歩かせたくなかったから、俺は竜太のところまで寄って行き肩を抱く。体調のせいかしゅんと項垂れていて顔がよく見えない。どうしたものかと覗き込むと、竜太は赤い顔して俺から目を逸らした。 「あ……お腹は大丈夫。そんなことより、あの、ごめんなさい、僕……周さんに迷惑かけちゃって。えっと……あれはふざけてたわけじゃなくて……あっ……いや、なんていうかその……」 こんなに恥ずかしそうにしている竜太、久しぶりに見た。笑っちゃ悪いけど、これは可愛い。 「何? ちゃんと覚えてんの?」 「そりゃ、酔っ払ってたわけじゃないですから、覚えてます……ていうかちゃんと意識あります。熱で頭の中ホワホワしちゃって久しぶりの周さんに僕、浮かれちゃいました。周さん、僕の看病してくれてたのに、なんかごめんなさい」 「いいって、俺も竜太が元気になってくれりゃそれでいいし、可愛かったし?……ねえ、キスしていい?」 あれを自覚ありでやってたかと思うとほんと可愛い。浮かれるほど俺と会えて嬉しかったってことだろ? 風邪がうつるからダメとか言って俺から逃れようとする竜太。俺はそんな竜太を無視して顔を押さえ込み、思いっきりキスをした。

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