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頼りになるのは……⑥

「周さん、周さん……おはようございます」 竜太を俺のベッドで寝かせ、俺はリビングのソファーで眠っていた。浅い眠りから竜太の呼ぶ声で目を覚ますと、久々にソファーで寝ていたせいか体の節々が痛かった。ちょっと唸りながら体を起こすと軽く目眩もする始末。 「ごめんなさい。こんなところで寝かせてしまって。僕もう熱下がってかなり体調よくなりました。いっぱい看病してくれてありがとうございます」 竜太が遠慮気味にそう言って、俺の横に腰掛ける。可愛くギュッとしがみついてきたかと思ったら、すぐ俺の手をとり怪訝な顔をした。 「周さん? これ、どうしたんですか?」 うわ……何で気づくんだよ。 絆創膏も貼ってないしバレないと思ったのに、竜太は俺の指の火傷を目敏く見つけた。 「あ、これちょっとな。う……ん、そんな顔すんなよ。そう、粥作ろうとして失敗したの」 黙ってるけど竜太の言いたいことがすぐわかった。両手で俺の手を掴み、まじまじと見つめてる。 「もう……大丈夫ですか? 痛そう……僕のために頑張ってくれようとしたんですね。ありがとうございます。他には怪我、してませんか?」 スリスリと手の甲を摩りながら心配そうに俺に聞く。ちょっと鍋をダメにしちゃったのは言いにくい。 「大丈夫だよ……って、え? なに?」 急に竜太が俺の顔を掴み、顔を寄せる。キスされるのかと思ったらそうではなく、徐に額と額をくっ付けてきた。 「周さんっ! 熱ある!……ちょっと、熱!」 バタバタと慌てた様子で竜太が俺の手を取り寝室に引っ張っていく。なに? この力。普段の竜太とは想像つかない力でベッドまで連れていかれ、あっという間に寝かされた。 「僕の風邪がうつったんです。ごめんなさい。周さん、明日仕事は?」 「あぁ……休み。一日休みだから大丈夫」 そういや目が覚めたとき目眩したな……節々が痛えのはソファーで寝ていたからじゃなくって熱のせいだったのか。 「竜太〜、竜太のせいじゃねえからな、気にすんな。そんな顔しないでくれ」 せっかく竜太の熱が下がったっていうのに、俺のせいでこんな顔させちまってる。凄え心配そうな顔。そんな顔も堪らなく愛おしいんだけど、それよりも熱が出たって意識し始めたらどんどん具合が悪くなってきたようなきがしてきた。俺ってどんだけ単純なんだ。 「なんだよ、竜太の風邪菌なんて弱っちいかと思ったのによ……」 「もうっ、風邪菌に弱いも強いもありませんから! バカなこと言ってないでちゃんと寝ててくださいね」 竜太は俺のおでこにチュッと軽くキスすると寝室からさっさと出て行ってしまった。 「………… 」 竜太のことだから、つきっきりで心配しながら看病してくれんのかと思った。意外にあっさりしてんだな。 なんだよ。めっちゃ寂しい。心細い…… 竜太が元気になったら抱き潰してやろうと思ったのに、出来なくなったのがまた更に悲しかった。 俺、熱出したのなんていつぶりだろう。多少の風邪なんかはあったかもしれないけど、こうやって寝込むほどの熱は竜太と付き合ってからは記憶がない。まあ、ふらふらするものの起きてられないわけじゃない。竜太が寝てろって言うから寝てるだけだ。でも喉痛えな。体も痛え。口ん中熱いな。 ああ……喉乾いた。 ポカリでも持ってきてもらおうと竜太に声をかけようとしたら、察してくれたのかグッドタイミングで寝室のドアが開き、お盆を持った竜太が入ってきた。

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