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賑やかなクリスマス②/もう一人のお兄ちゃん

「あ! 尚ちゃん来てたんだね。ってすごくお姉ちゃんになってて僕びっくりだよ」  竜太は来るなり尚を見て笑顔を振りまく。尚はもちろん竜太との記憶はないからキョトンとして俺の後ろに隠れてしまった。さっきまでのうるさいお喋りはどこ行ったんだ? こいつ人見知りなのかな? ちょとウケる。 「あなたりゅうた、くん?」 「そうだよ。僕ね、尚ちゃんがまだ赤ちゃんの頃に一回会ってるんだけど、さすがに覚えてないよね」 「あ、うん、ごめんなさい……」  竜太と尚が普通に喋ってるのもなんだか不思議な気分だ。しおらしく「覚えてなくてごめんなさい」と謝る尚に、竜太は慌てて「別にいいんだよ」とフォローを入れてて思わず笑ってしまった。 「周くんとりゅうたくんは仲良しのお友達?」 「うん……そうだね、仲良しだよ。尚ちゃんもよろしくね」  竜太は俺の顔をチラッと見てから何食わぬ顔をして返事をする。きっと何か気を遣っているのだろう。俺は尚に「竜太は俺の恋人だよ」と訂正した。 「ちょっと周さん」 「ん? だって友達じゃないだろ、俺にとって竜太は大事な恋人だ」 「………… 」  尚は俺の言葉に黙り込んでしまった。心なしかしょんぼりしているようにも見え、俺は尚を抱き上げた。 「尚? 尚はもちろん俺の大事な家族だからな」  尚が「クリスマスは恋人たちの日」としきりに言っていたのを思い出す。 「クリスマスはな、恋人同士も家族も、友達でも夫婦でも、楽しみたいやつが楽しめばいいんだよ。恋人たちだけのもんじゃねえだろ?」 「周くん、尚はお邪魔じゃない? 尚も一緒、いい?」 「は? 当たり前だろ。尚は俺とクリスマス一緒に過ごすためにここに来たんだろ?」 「うん! ならりゅうたくんも一緒ね!」  途端に機嫌を直した尚は竜太の方に両腕を伸ばす。竜太はごく自然に俺から尚を抱き上げ、抱っこをしながらソファに座った。尚も俺にしたみたいにぎゅっと竜太に抱きつくもんだから、なんとなく面白くない……でも別にこんなチビ助にやきもち妬いてるわけじゃない。 「で、どうすっか。尚、腹は?」  気付けばもう昼も過ぎている。本当はこれから竜太とデートに出かける予定だったけど、尚がいたんじゃそれも無理だ。とりあえず飯を食わせねえとかな、と思って聞いてみた。 「うん、尚ね、お弁当持ってきたの。ママが作ってくれたんだ」 「マジか。俺のは?」 「ないよ」  尚は自分で持ってきたリュックの中から弁当を取り出し、俺と竜太に得意げに見せる。一丁前に何かのキャラ弁になっていて、下手ではないけどいつも大雑把に飯を作っているお袋の姿しか見たことがなかったから、今更ながらちゃんと母親やってんだなって感心してしまった。竜太は尚に「ママ、すごい上手だね」と言い、俺と竜太が食べる昼食も簡単に作ってくれた。  三人でテーブルに着いて昼食を済ませる。尚はしっかり弁当を完食し、洗い物をしている竜太にくっついて手伝いをしていた。 「別に今夜は特別お店を予約しているわけでもないし、みんなでお家でクリスマスパーティしましょうね。僕そのつもりで来ましたから」  竜太は「三人で買い出しに行こう」と言いながら、張り切って尚と一緒に買い物するものをリストアップしている。竜太は何かとすぐに尚に話しかけ、大袈裟なくらい褒めながらしっかり手伝いもさせていた。ガキの扱いがうまいな、なんて、見てると俺よりお兄ちゃんぽくて微笑ましい。  そんな二人を眺めながら、俺も出かける支度を始めた──

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