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賑やかなクリスマス④/康介も一緒に
周さんのアパートから目的のスーパーまで少し歩く。尚ちゃんは楽しそうに僕と周さんに手を引かれ、お喋りが止まらない。幼稚園のお友達のことや、最近少しずづ文字の読み書きができるようになったこと、パパとママのこと、そして周さんとはたまにしか会えないからちょっと寂しいのだと、クルクル表情を変え楽しそうに話してくれた。
「あ、周さん……あれ」
少し先に見えたのは一人で道に突っ立っている康介の姿。「待ち合わせかな?」と近づくと、康介もこちらに気がついたのかブンブンと元気に手を振ってきた。
「あいつ遠くにいてもなんかうるせえな」
周さんは面倒くさそうにそう言って知らんぷりするもんだから、僕は康介に手を振り返す。近づいたらすぐ尚ちゃんのことに気がついて康介は首を傾げた。
「俺の妹の尚」
「は? え? 周さんの妹? 嘘でしょ」
「嘘言ってどうすんだよ」
尚ちゃんは繋いでいた手をギュッと握る。やっぱり初めましての人は緊張するのかな。でもそんな心配をよそに、尚ちゃんはすぐに康介に自分から挨拶をした。
「尚です。お名前は?」
「あっ、俺? 康介……康介ね。尚ちゃんよろしくね」
ずいっと手を差し出す尚ちゃんに、おどおどしながら握手をする康介。尚ちゃんのことを見て「めっちゃ可愛い。妹なんて嘘だ……」とぶつぶつ言ってる康介に、なんでこんなところにいたのか聞いてみた。
「康介は修斗さんと待ち合わせ?」
「ううん、いや待ち合わせだったんだけどさ、修斗さんから仕事が入っちゃったから終わったら会おうって、今メッセージきてやりとりしてた」
修斗さんの仕事もあるし、今年はクリスマスだからといって特別何かをする予定もなかったのだけど……と康介は少し寂しげに言う。
「ほら行くぞ。遅くなっちまうだろ」
「ねえ、こーすけくんも来る?」
最初こそ緊張していた様子だった尚ちゃんも、挨拶した後はもうなんともないみたいで可愛い笑顔で康介を誘い、歩き始めた周さんはびっくりして足を止めた。
「あ? 何言ってんだ?」
「こーすけくんも一緒、楽しいじゃん。クリスマスやろ!」
これから買い出しするのにたくさん荷物もあるし、尚ちゃんの言う通りみんなでクリスマスパーティするのも楽しそうだと思い僕も頷く。
「いいね。康介もおいでよ。修斗さんも後で合流してさ、たまにはいいんじゃない? ね? 周さん」
「はぁ、しょうがねえな。康介、荷物持ちから付き合えよ」
今度は尚ちゃんは周さんから離れ、康介と僕の間にきて手を繋ぐ。康介は小さい子に慣れてないからか、歩きながら「手がちっちゃい」とか「何これ可愛い」とか「周さんに似てなくてよかったね」とか興奮気味にお喋りをしている。いや、周さんだって可愛いよ……と思わず言ったら「は?」と一瞥され鼻で笑われてしまった。
康介ったらちょっと失礼じゃない? ハキハキしているところとか、顔が綺麗なところとか、周さんとそっくりだと思うんだけどな。
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