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第6話
「わかってるけど…ちぇ」
ユウの言葉に頷き軽く舌打ちして、歩いていく。
BOUSを出て夕暮れの駅までの道を…
「じゃーな!ユウまたな」
「うん、また…」
ユウとヨシは駅に着くと、お互い帰る電車の方向が反対なので、ここで手を振って別れる。
「…はぁ」
ユウは静かに溜息をつく…
今のままの自分では、年下のサクヤとの撮影、上手く出来るとは思えないから…
NGを出さないようにするだけでも大変なのに…
流れをつかんでリードしなくてはならない…
それで気負ってしまうユウ。
そして、もうひとつ気が重くなることが…
そろそろ日が沈み薄暗くなってくる。
自宅へ、最寄りの駅から徒歩で帰る性優名ユウこと本名みずき…
自宅を目前にし…みずきは、ふと足を止めて…自宅の様子を見る。
家の明かりは付いていなかった。
すっと、家を通り過ぎて…近くの公園の電灯下のベンチに来て座るみずき。
(……あのヒトが居る家に、帰りたくない…)
帰る場所がそこにしかなくても…毎日思ってしまう。
暗い部屋…そこへ入って行けない…
自分の家の明かりがつかなくなって…もう3年ほどが経つ。
それ以前は、明かりもあったし…母親も、姉さんも居て、普通の幸せな家族だった…。
父親が狂ってしまうまでは…。
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