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第11話
「……」
姉は、そんなみずきを見て、切ない気持ちになり…自分より小さいみずきを抱き寄せる。
「…姉さん、母さんの所に逃げて…」
ぽつりと考えるように姉に言うみずき。
「…できない、みずきを置いてなんて行けない…」
姉は首を横に振るが…
「…ううん、行って!オレ…姉さんがアイツに虐められるの、すごく嫌だ…母さんみたいに安全な所で暮らしてほしいから…」
みずきはそう頷きながら言う。
「みずきを1人にはできないから…一緒に行こう、母さんの所へ…」
姉はそう誘ってくるが…
「だめだ、2人とも出て行って、父さんを1人にしたら…また母さんの住んでる場所探し出してしまう。オレが残るから、学校もあるし、オレ、男の子だから父さんと2人でも平気だよ」
姉さんの安全が一番だから…と頷いて言うみずき。
「みずき…でも」
やはり暴力を振るう父のもとに残すのは気が引ける…
「叩かれそうになったら、今みたいに逃げるし、電話もするし、大丈夫!」
姉を心配して強がっていうみずき…。
「……」
「母さんに電話しよう、きっと迎えにきてくれるから…」
そう、もう一度頷き、微笑むと…
「…ごめん、ごめんね。みずき…ありがとう」
静かに言葉を出す姉…
このギリギリの生活から…抜け出したかった。
小学生のみずきひとりに背負わせてでも…
「うん…」
寂しい気持ちを隠して頷くみずき。
その後、タイミングを図ったようにコウヤが帰ってきて、3人でコウヤが買ってきてくれた缶コーヒーを飲む。
そして、落ち着いたころ…
母のもとへ電話し、母が指定した駅まで付き添ってきてくれたコウヤ。
みずきは姉と母親に手を振り…
しばしの別れをするのだった。
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