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第30話

一線引いて…彼から逃げていた、深く関わらず…優しい先輩のままで… 本性を、本当の想いを隠したまま… 別れるその時まで…嘘をつき続けるつもりで… でも…それは、逃げているだけでは…本当の意味で、懺悔になっていない。 …弟は、許してくれやしない。 すべてを君に話す事が…本当の償いなのだから… 「…あの、嫌だったら別に…」 みずきは、滅多に見ないコウヤの真剣な表情をみて…教えるのが嫌なのかと思い言ってしまう。 「…ウチに来る?」 スッと瞳をあわせ…真剣な顔のまま問うコウヤ。 「え…」 その瞳に見つめられ…すぐには答えられない。 「…教えてあげるから、ウチに来る?」 そっといつもの微笑みを戻して…もう一度囁く。 「あ…はい」 反射的に頷く… 「…全然警戒しないんだね」 「え…」 「いいよ、行こうか…」 コウヤはタバコを消して、みずきの手をとり、歩き出す。 「はい、コウヤさんって、一人暮し?」 そっと聞くと… 「今はね…1人」 少し寂しそうに微笑んで答えるコウヤ。 「…前は?」 それを見てつい聞いてしまうみずき。 「…家族と住んでたよ。母と…義父さんと、弟とで…」 いつもの調子で答えてくれる。 「……」 コウヤの口調から想像できるのは、普通の温かい家族。 でも、コウヤは夜中…家から逃げるように、毎夜公園で過ごしていた。 「…子どもの頃は、良かった…はずなのに、どうして自分は…我慢できなかったんだろうね」 黙ってしまったみずきにコウヤは語りかけるように言葉を出す…

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