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第31話
「え…?」
首を傾げるみずき。
「ユウ、俺の話しも…聞いてくれる?」
隣を歩きながら聞く。
「はい…」
なんだかよくわからないけれど、話しくらい聞くよ、と頷く…
「……」
すべてを話して、楽になれるか…
それとも、よけい苦しむことになるか…
それでも、自分を偽ったままでは…
まっすぐ、君を抱くことも…出来ないから…
「はい、ここ。入って…」
コウヤはいつもの笑顔のまま、自分の住んでいるマンションにみずきを招きいれる。
「はい、お邪魔します…」
みずきはそう言って、脱いだ靴を揃えて部屋の中へと進む。
「ふ、君は…しつけが出来てるね」
そう褒めてくれるコウヤ。
「…母さんから、人様の家に上がる時は、失礼がないようにって、何回も教えられたから…」
「ユウのお母さんはしつけに厳しい人なんだ」
普通に会話しながら室内へと歩く…本音は微塵もみせず。
「そんなことはないけど…母さんがいつも言うことは決まってるから…」
「何て言うの?」
コウヤの問いに…
「人様に迷惑をかけることはしないように、と…人には優しく気遣って、皆に好かれる人になりなさい…、小さい頃は、こればっかり…」
軽く首をかしげて答えるみずき。
「でも…大切な事だね」
みずきの母親の教えは、人間として必要なことだ。
以前の自分に足りないコト…
「…ウン、間違ってないと思うけど…難しいとも思う」
出来るようになるには、よほど人間ができてないと無理…
自分は真似ているだけ…そう意味を含んで頷くみずき。
「うん…そうだね」
コウヤは静かに頷く…
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