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第32話

部屋へ案内し、ソファへみずきを座らせる。 座って部屋の様子見るみずき… 室内は明るく、洋風な造り…綺麗に片付けられている。 「きれいな部屋だ…」 そう呟くみずき。 父と2人で住むようになって、父の機嫌が悪い時など荒し放題なので… みずきが片付けても片付けても、収拾がつかない自分の家とは大違いの綺麗な住処。 「はは…散らかすほど物が、ないんだよね…あまり使ってないし…はい」 コウヤはみずきにホットコーヒーをさし出す。 「どうも、コーヒー」 受け取って中身を見ながら呟く。 「嫌いだった?」 「ううん、あまり飲んだことないから…いただきます」 首を振って、みずきは一口飲む… その様子を見つめ…呟くコウヤ。 「…中身は、こんなに違うのにね」 「…ん?」 コウヤの独り言に不思議そうに首を傾ける。 コウヤは、みずきの隣に座って、頭を優しく撫でる。 「……?」 「でも…違うって思ってても、ふとした瞬間…君とあの子が重なって…」 今でも自分の心を縛りつける。 息をついて…みずきの肩を寄せるコウヤ。 「…?…誰?」 コウヤの言葉に、そっと聞くみずき。 「……」 スッと、片手を上げて、本棚を指差すコウヤ。 視線を移すと…そこには、ひとつの写真たてに写真が、飾ってある。 よく見ると…それは… 「…オレ?」 その写真には、学生服を纏った…自分がコウヤと隣合わせで写っていた。 いや…正確には、自分に瓜二つの顔を持つ、誰かが… なんとなく、恐くなってコウヤの表情を見てしまうみずき。 「…俺の、弟…。それが生きてる間の最後の写真…」 いつもの笑顔が消え、無表情のまま教えるコウヤ。

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