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第33話

「え…、おとうと…?」 急に何を話出すのかと…聞き返してしまう。 「…よく、似てるんだ…君に…」 顔を覗きこみ… みずきの前髪… 頬に触れ、言葉を続ける。 「…君を、はじめて見た時…俺は、息が止まる思いだった…」 「コウヤさん…?」 「死んだ筈の弟が…幼い頃の姿で、俺の前に…舞い戻って来たのかと、非現実的だけど…本当に、そう思った…」 「……でも、俺はユウで、鈴鹿みずきだけど…」 そっと傾きコウヤの言葉を否定するみずき。 「…そう、分かってるよ…君は違う、弟とは…」 柔らかく微笑して… そう頷くコウヤ。 「あの子は…甘いコーヒーが大好きで、こどもっぽくて…無知だったけど、明るく誰にでも好かれる…人を和ませる心を持ったコだった…」 思い出して少し悲しい表情を見せるコウヤ。 「コウヤさんも、弟の事好きだったんだ…」 口ぶりから想像して、みずきは言う。 「…本当は好きだった、けど、俺は…生きてる間に、優しくしてあげることができなかったんだ…」 「なんで…?」 気は引けたが…好奇心に負けて聞いてしまう。 「…俺は、わがままだったから、我慢できなかったんだ…」 「え…?」 そんな風には見えないよ、と首を傾げるみずき。 「子どもの頃…俺は弟のように、話で人を楽しませるような事はできなかった…神経質で、両親の気を引くには勉強くらいしか…でも、親から見たら…やっぱり明るい弟の方が可愛くて…俺はずっと、嫉妬してた…」 後悔を吐き出すように息をつくコウヤ。 「親の目を盗んでは…虐めてた…」 「……え?」 優しいコウヤの口からでた言葉とは思えなくて、また顔を見てしまう。 「信じられない?…でも、本当。あの子は、俺がどんなに虐めても…絶対、親に言い付けたりしなかった…だから、どんどん…エスカレートして…」 自分でも止められなかった。

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