33 / 74
第33話
「え…、おとうと…?」
急に何を話出すのかと…聞き返してしまう。
「…よく、似てるんだ…君に…」
顔を覗きこみ…
みずきの前髪…
頬に触れ、言葉を続ける。
「…君を、はじめて見た時…俺は、息が止まる思いだった…」
「コウヤさん…?」
「死んだ筈の弟が…幼い頃の姿で、俺の前に…舞い戻って来たのかと、非現実的だけど…本当に、そう思った…」
「……でも、俺はユウで、鈴鹿みずきだけど…」
そっと傾きコウヤの言葉を否定するみずき。
「…そう、分かってるよ…君は違う、弟とは…」
柔らかく微笑して…
そう頷くコウヤ。
「あの子は…甘いコーヒーが大好きで、こどもっぽくて…無知だったけど、明るく誰にでも好かれる…人を和ませる心を持ったコだった…」
思い出して少し悲しい表情を見せるコウヤ。
「コウヤさんも、弟の事好きだったんだ…」
口ぶりから想像して、みずきは言う。
「…本当は好きだった、けど、俺は…生きてる間に、優しくしてあげることができなかったんだ…」
「なんで…?」
気は引けたが…好奇心に負けて聞いてしまう。
「…俺は、わがままだったから、我慢できなかったんだ…」
「え…?」
そんな風には見えないよ、と首を傾げるみずき。
「子どもの頃…俺は弟のように、話で人を楽しませるような事はできなかった…神経質で、両親の気を引くには勉強くらいしか…でも、親から見たら…やっぱり明るい弟の方が可愛くて…俺はずっと、嫉妬してた…」
後悔を吐き出すように息をつくコウヤ。
「親の目を盗んでは…虐めてた…」
「……え?」
優しいコウヤの口からでた言葉とは思えなくて、また顔を見てしまう。
「信じられない?…でも、本当。あの子は、俺がどんなに虐めても…絶対、親に言い付けたりしなかった…だから、どんどん…エスカレートして…」
自分でも止められなかった。
ともだちにシェアしよう!