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第38話

「…あのコは、俺を殴ったりしなかったから…」 すっと冷静さを取り戻したコウヤ、 みずきに言葉をかける。 「う…」 申し訳なくて言葉をなくすみずき。 「…ううん、ありがとう…よく分かったよ」 君が殴ってくれたおかげで…混乱していた頭がしっかりした。 君は弟と全然ちがう… それが…今、はっきり判った…もう、迷ったりしない。 「…みずき」 そっと本名を優しく呼ぶ。 「…!」 みずきは少しドキっとする。 今まで一度も、コウヤから…本名で呼ばれたことがなかったから… 「…気付いていた?君の本当の名前…呼んだことがなかったよね、呼べなかったんだ…」 そっとみずきを抱き寄せたまま…囁く… 君の名前…それは… 「幡瀬みずき…」 「えっ?」 「…それがあのコの名前」 名前まで同じで…どうしても呼ぶことが出来なかった。 「同じ名前?」 みずきも驚く… 血が繋がっているわけでもないのに自分にそっくりの人間が居ただけでもビックリしているところを… 名前まで… 「…でも、違う」 コウヤは首を振り… 「…もう一度…名前、教えて?」 いつもの笑顔で聞く… 「…鈴鹿、みずき」 ぽつりと答える。 「…漢字は?なんて書く?」 「鈴に鹿で、すずか。瑞は…、瑞々しいの、一字でミズキ…」 素直に…少し恥ずかしげに答えるみずき。 「みずみずしい?美味しそうな果物みたいな例えなんだね…」 くすくす笑って言うコウヤ。

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