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第44話
「コウヤさん?」
コウヤは言葉を繰り返しながら…みずきの頭を腕で包みこむ…
左の瞳から零れ落ちた…
気付かれてはいけない…気持ちを隠す為に…
弟を苦しめて、死なせてしまった俺には…恋をする資格さえ…ないのだから…
自分だけ、思い通りの幸せを得ることは出来ない筈…
「…コウヤさん?」
どうしたのかと疑問形で名前を呼ぶみずき。
コウヤはそのままみずきの瞳を片手で覆い隠し…流れ伝う自分の涙を拭う。
そして…優しくみずきにキスをする。
「ごめんね…やっぱり、演技は…教えられそうにない」
コウヤは唇が離れてすぐにそう囁く…
「それは、いいよ…もう」
コウヤの行為を流して頷き言うみずき…
「代わりに…演技の前に、できること…教えてあげる」
優しく囁く…
「え…?」
「早めに来て、出来れば台本を全部覚える事、自分のトコだけじゃなく、相手の台詞や動き、目線やカメラ位置まで覚られたらカンペキ」
「台本全部?」
さらっと言うコウヤだが、言っていることはかなり難しい…
心の中で唸ってしまうみずき。
「攻側は受側よりも多少余裕があるからね、フォローできるところはしてあげたいしね…」
「う、ウン…」
やはり詰まった返事をしてしまうみずき、自分にフォローが出来るのだろうか…?
「でも、最初から上手く出来る人なんかいないから…あまり気を張らないで。内容も工夫してくれてると思うしね…」
コウヤはみずきの頭をよしよしと撫でて言って…そっと離れる。
「うん…ありがとう、頑張ってみる」
コウヤの言葉に力を得て、強く頷くみずき…
「その意気だよ…」
今では君の、その笑顔が…逃げてばかりいた自分に力を与えてくれる。
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