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第49話
「…はじめようか」
台本を再び開きサクヤから少し離れて座りながら、サクヤの方を見ないようにして、できるだけ先輩らしく声をかける。
いつも通りに、いつも通りに…
みずきは気持ちを立て直すが…
「……」
しかしサクヤはなぜか言葉を返してこない…
ただ、さっきとは逆に、サクヤが自分の方をじっと見ている…
「……な、何?」
困惑しつつ、何か今の間に問題があったのかと思って、ちらっと様子を伺い聞くみずき。
その澄んだ緑色の瞳に映されていると思うだけで緊張してしまう。
「別に…」
不思議そうな瞳を向けていたサクヤは、短く呟いて台本を開く。
「……(気になる)」
オレ、何かおかしいのだろうか…?
スッキリしない気分で首を傾げるみずき。
でも、今は台本チェックを優先させなくては…
落ち度があるなら言ってくるだろうし…
「…読むよ」
「はい…」
みずきの言葉に今度はちゃんと返事が帰ってくる。
しかし表情に変化はない…
感情を表に出さないせいか、なんだか人形のように思えてくるサクヤの様子…
……違和感を感じてしまう。
足りないもの…
(…笑顔)
笑えばもっと可愛いだろうな…などと勝手に思いながら台本チェックしていく。
「いいかな、行こうか…」
事務的に台本のチェックを終えて、助手の所へいくために少しぎこちなくサクヤへ声をかけるみずき…
台本を読んで、役になりきろうとすると少し落ち着いてくるみずき。
いくら日本人ばなれした可愛い後輩が相手でも、動揺してる場合じゃない…
サクヤとははじめての撮影、今後のことも考えると、気まずくはなりたくないから、上手く終わるように頑張ろう。
そう、密かに決意するみずき。
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