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第50話
それから監督の指示のもとリハーサルを行い、軽くメイクと衣装の準備にいく…
その間、ほとんど私語を交えることなくサクサクと進んでいく…
隣でメイクを受けているサクヤを見て、やはり少し緊張するみずき。
いくら頭でいつも通りにと思っても、心が勝手にどきどきしてしまう。
なんでこんなに落ち着かないのか、恋愛にかなり鈍いみずき『一目惚れ』と言う言葉すら知らないのでその理由にまったく気付かない。
(きっと、年下と初めて撮影だから緊張して心がおかしくなって落ち着かないんだな…)
みずきは頷いて、サクヤを見てドキドキしてしまうことを他に理由づける。
(落ち着いて、落ち着いて、役になりきるんだ)
恋心など無縁だったので、深くは考えないみずき。
サクヤに好意を持ってしまっていることに気付くのは…ずっと後になるのだった。
ふと、サクヤがこちらを向こうと動いたので、慌てて視線を前に向けるみずき。
なぜか、サクヤと視線を合わせるのが恐いみずき…
視線が合うと、そらせなくなる。
自分だけがサクヤのことを聞いてしまっていて、後ろめたい気持ちになっているからなのかもしれない…と、不思議な感覚をそう解釈するみずき。
(……やりにくい)
ふぅ、と溜息…
みずきは撮影でそんなふうに感じたのも初めてで、普段撮影相手をこんなに意識したことなどないから…サクヤとの撮影は、やりにくい。
そんなことではいけないのだけれど…
「ねぇ、いつもこうなんスか…」
不意に、サクヤはみずきに問ってくる。
「…えッ?…なにが?」
急に話し掛けられたことに驚いたが、平静を装いつつ聞き返す。
「……」
そんなみずきをみて、何か言い返そうとするサクヤだが…
「二人とも、撮影ルーム入って!」
と、監督の声に呼ばれる。
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