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第51話
「はい」
サクヤは言いかけたことを止め、返事をして部屋へ向かってしまう。
「……はい」
みずきも返事するが、サクヤの言ったことが気になってしまう。
(いつもこう…?)
どういう意味だろう…
心に引っ掛かりを感じながらも演技に入るみずき…
役になりきって…
「サクヤは、やっぱり色が白いな」
撮影カメラが回りだし、サクヤが着ている水色の服を静かにずらしながら優しく台詞を言うユウ。
「やっぱり恥ずかしいよ…ユウ兄ちゃん」
うつむき可愛い台詞を返すサクヤ…
先刻までの2人とは大違い。
サクヤのはにかんだような笑顔…
はじめて間近で見る微笑みに、ドキドキ胸を高鳴らせながら、自分も演技の中で、ちょっと強がったような笑顔でセリフを繋ぐ…
「平気、平気!サクヤだってしたいって言っただろ?」
「だって…大好きだったら普通するよって言ってたから…」
瞳をあわせて尋ねるように言うサクヤ。
「うん、だからいいだろ!気にすんなよ」
無邪気な設定なので、普段の2人の性格からは想像もつかない…
演技に入り込んでいるから、こんな役でも平気で演じられるみずき。
役になりきるのが比較的得意だから…
サクヤは、コウヤさんが言うには演技ができないらしいけど…
実際台本チェックをしてみると、セリフ覚えは早いし、漢字は自分より読めるし…、自分なら覚えるのに30分かかる所を、10分以内で出来てしまうような…
並の11才よりは優れているように感じた。
本番に入っても、まぁ、演技は素晴らしく上手いとは言えないけれど、この年なら普通程度だし、目立ったセリフ間違いもしないので、思ったよりは普通に撮影できそうだ。
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