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第52話
「…や、やっぱり…やだ」
きゅっとユウの服を掴んで言うサクヤ…
「なんで?」
少し顔をしかめて、ベッドに押し倒しぎみのサクヤに聞くユウ。
「だって…こわいもん」
ぽつりと答え、様子を伺うように上目づかいに見上げてくる。
その、なんともいえないくらい可愛いサクヤ…
動揺を隠しつつ、演技を続けるユウ。
「大丈夫だって!まかせろよ、オレのこと好きなんだろ?サクヤ」
やや強引なセリフを言う。
「う…ん」
弱々しく頷くサクヤ…
「なら、オレ相手だったら恐くないだろ?」
またまた決めつけぎみに聞くユウ…
「う…ん」
その勢いに押されて、頷いてしまうサクヤ。
「じゃ、今度こそ、いいよな」
微笑んで自分のペースに引き込んでいく…
ユウは、マイペースな役柄を演じ…サクヤの身体に触れながら唇に軽くキスする。
「…っ、もー、なんでユウ兄ちゃんは、そんなにえっちなの?」
不思議そうに首をかしげ、聞くサクヤ…
「サクヤのコトが好きだからに決まってるだろ!」
さわやかに微笑みながら、さらっと駄目押しの一言を伝えるユウ…
「うー、うん」
頷くサクヤだが…
「カット!!サクちゃん、そこもう少し微笑んで、嬉しそうに!」
カメラを止め、監督がサクヤにNGを指摘する。
「…はい、すみません。はぁ…」
(ストレス溜まる)
謝ったあと、大きく溜息をつくサクヤ…
自分と性格が掛け離れた役を演じることに抵抗を感じているらしく、撮影中断するといっきに無表情になる。
「…だ、大丈夫か?」
うつむいてしまったサクヤに、やや遠慮気味に声をかけるユウ。
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