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第54話
「…?」
サクヤは答えないみずきを怪しむような表情で見つめ答えを待つ…
その視線が痛い。
ややうつむいて、視線を外し…
「…1」
答えを求める視線から逃げ切れなくて…
ぽそっと答えようとするみずき。
「一年?」
すぐ聞いてくるサクヤ。
「…いや」
ますます答えられなくなるみずき。
言い詰まっていると、丁度監督が声をかけてくる。
「そろそろ、いい?」
今日の撮影は話が短いので、監督ものんびりしている。
「は、はい」
みずきはサクヤの質問から逃げるように監督に頷く。
言って不安にさせない方がいいから…と考えて。
「……」
サクヤははっきり答えないみずきに顔をしかめてみせるが撮影をしないわけにはいかないので、それ以上聞くのをやめる。
「はい!ユウちゃんからね!スタートっ」
監督は大きく声をかけ、撮影が続行される。
さっきの会話の内容をうち消すように、さらに役になりきって、不安な自分を忘れるユウ。
撮影は進み…
ユウなりにサクヤをリードして、途中大きな失敗もなく前戯を終え、お互いの呼吸数も上昇し、興奮を伝えあえる。
しかし…これは撮影だから気は抜けない。
「ァ…やだ、も…それ…んっ」
「…どれが?」
サクヤの熱い吐息まじりの言葉…
クールぶったセリフを返すユウだけれど、本人には全然そんな余裕はない。
この小学生ばなれした色気と可愛さ…
漏らす吐息ひとつで、イッてしまいそうな感覚になるユウ。
そんなことになれば撮影をかなり中断させてしまうから…
表情ではなく身体へ視線を送り、冷静さを取り戻そうと試みたりするユウ。
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