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第59話
そのまま、しばらく時が流れ…
「……ハイ、オッケー!撮影終了、面白かったよ」
監督の声がかかる…
(おもしろ…?)
監督の言葉に疑問を感じるが、それよりもサクヤに謝らなければ…
「ごめん…」
「は?何が…?」
体勢を立て直す前にいきなり謝ってくる相手に、きょとんと言い返すサクヤ。
「ケガ…させた…から」
言いにくそうに、サクヤの鮮血で汚れたシーツを見て呟くユウ。
「…別に、慣れるまでは仕方ないんだろ?」
低姿勢な先輩をみて、ついタメ口になるサクヤ。
ユウはサクヤが起き上がるのを手伝い…
「それでも…やっぱり、謝っておく…」
オレにもう少し余裕があったら…自分を責めるみずき。
そこへ、監督の声…。
「さ、涙のシーン、ワンカット追加撮りいくよ、サクちゃん」
「はーい」
疑問な顔でみずきを見ていたサクヤだが、監督に軽く返事する。
「ユウちゃんも協力して、そう、支えて…そのまま」
監督に言われるまま、サクヤをナナメに寝させた状態で止める…
そして涙役の目薬をサクヤの緑の瞳へ溢れないよう入れる。
サクヤは何度か目薬涙を使ったことがあるのか、手慣れたもの…
「オッケー?サクちゃん、瞬き二回でいいから」
「はい、OKです」
「じゃ、いくよ~、3、2、1…スタート!」
監督の掛け声に、またスタジオが静まり返る。
サクヤは言われたとおり、まばたきを二回、ぱちぱちと瞼を動かす…
すると、ぽろっと上手に一筋の涙の雫がこぼれ落ちる。
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