59 / 74

第59話

そのまま、しばらく時が流れ… 「……ハイ、オッケー!撮影終了、面白かったよ」 監督の声がかかる… (おもしろ…?) 監督の言葉に疑問を感じるが、それよりもサクヤに謝らなければ… 「ごめん…」 「は?何が…?」 体勢を立て直す前にいきなり謝ってくる相手に、きょとんと言い返すサクヤ。 「ケガ…させた…から」 言いにくそうに、サクヤの鮮血で汚れたシーツを見て呟くユウ。 「…別に、慣れるまでは仕方ないんだろ?」 低姿勢な先輩をみて、ついタメ口になるサクヤ。 ユウはサクヤが起き上がるのを手伝い… 「それでも…やっぱり、謝っておく…」 オレにもう少し余裕があったら…自分を責めるみずき。 そこへ、監督の声…。 「さ、涙のシーン、ワンカット追加撮りいくよ、サクちゃん」 「はーい」 疑問な顔でみずきを見ていたサクヤだが、監督に軽く返事する。 「ユウちゃんも協力して、そう、支えて…そのまま」 監督に言われるまま、サクヤをナナメに寝させた状態で止める… そして涙役の目薬をサクヤの緑の瞳へ溢れないよう入れる。 サクヤは何度か目薬涙を使ったことがあるのか、手慣れたもの… 「オッケー?サクちゃん、瞬き二回でいいから」 「はい、OKです」 「じゃ、いくよ~、3、2、1…スタート!」 監督の掛け声に、またスタジオが静まり返る。 サクヤは言われたとおり、まばたきを二回、ぱちぱちと瞼を動かす… すると、ぽろっと上手に一筋の涙の雫がこぼれ落ちる。

ともだちにシェアしよう!