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第64話

「ユウ、シャワー浴びたら、喫煙室においで…一服しよう」 「あ…はい」 コウヤの誘いに頷くみずき。 みずきはコウヤとプライベートで話をしたことで、他の先輩より信頼しているので、決して拒否はしない。 なので、誘いやすいコウヤ… 当然返ってくる返答を聞いて、微笑み… 「じゃ、待ってるよ…」 ヒラッと手を振っていつもの微笑みを残して去るコウヤ。 みずきは、もう一度頷いて…身体を流すためシャワールームに向かう。 シャワールームに入ると… 丁度シャワーを浴び終えて出てきた私服姿のサクヤがいた。 (…サクヤ…) みずきは今日の撮影相手のネームを心で呟く… 知り合って間もないし…決して嫌いではないのに、見つめられると責められているような気持ちにさせられ、胸が苦しくなる… …苦手な相手。 サクヤを、そう認識するしかないみずき… そんなことは知らず。 サクヤは、みずきをチラッと見ると軽く頭をさげ… 「お疲れ様です…」 そう立ち止まっていたみずきの横を無表情で挨拶して通り過ぎていく。 撮影スタジオでは見せてくれた笑顔… その感情を、今はもう見せてくれない… サクヤにしてみれば自分など、ただの撮影相手にしかすぎなくて… きっと、相手が変われば…自分のことなど忘れてしまう。 「あ…」 みずきは苦手なはずなのに、このまま別れてしまうのが惜しくて声を出してしまう。 「え?」 いぶかしく振り返りみずきを見るサクヤ… 「あ、いや…なんでもない…」 外見は平静に、しかし心では慌てて答えるみずき。 改めて引きとめた理由を問われると、答えようがないみずき… まさか、 (オレはサクヤの事が苦手みたいです。どうしてだろう?) と年下に、しかも本人に聞くわけにはいかないだろう。 そう心の中で葛藤しているみずきを見て… 「…変な人」 ボソッと呟き捨てて、みずきを置いてシャワー室を出て行く… 「変…」 思われているかも…とは思ったが実際、言葉で言われると、ダメージが大きいみずき。 独りぽつりと呟いてしまう。 なんだか…いたたまれない気分だが、みずきはシャワーを浴びて、コウヤが喫煙室で待っている筈なので、急いで向かう。

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