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第66話
「…君には、やっぱり…直接さよならを言っておきたくてね」
瞳を合わせ…優しく伝える。
「…さよなら?…でも」
ここで会えなくても、外で会える筈…と首を傾げる。
元々、コウヤとは、BOUSより先に外の公園で知り合ったのだから…これが最後とは思えないみずき。
「…ウン、さよならだよ、もう多分会えないと思う」
すっと微笑みを消して…
真剣な瞳をむけて、みずきに伝えるコウヤ。
「…えっ」
そんな真剣な顔をするコウヤを見るのは慣れていないので、ドキっとしてしまう。
…もう、会えない?
「…明日の朝の便で、イギリスへ行くんだ」
呟くように、言葉にするコウヤ。
「えっ…?コウヤさんが…?」
イギリス…!?
にわかに信じられなくて問い返してしまうみずき。
なんで急に…
「そう…だから、君とも、多分今日が最後…」
寂しそうな表情が、嘘ではないと物語っているが…
「嘘…な、なんで?」
コウヤは、みずきにとって、母と姉以外に信頼できる唯一の大人だから…
いなくなって欲しくない…
「俺は…ね、弟が亡くなってから…ひどく壊れていた時期があった。君と出会うまでのその期間…俺にとっては思い出したくもない…苦い事実。だけど…それを、なかったことには出来ない…俺が日本(ココ)にいるかぎり…一生、強く付き纏うことだから…」
コウヤは表情を落とし…みずきに伝える。
「…コウヤさん」
「外ヘ出たからといって罪がなくなる訳じゃないけれど…BOUS卒業を期に自分を変えていきたいから…」
コウヤの前向きな言葉を聞いてしまうと、止めることなんか出来ないみずき…
「本当に…もう、会えない?」
かわりにもう一度だけ聞いてしまう。
「そう、だね…向こうで、義父さんが会社を経営しているんだ、そこで働くつもりだから…日本に帰ってくることはないと思う」
頷いて教えるコウヤ。
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