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第70話
「大丈夫。それは…オレ、あのときコウヤさん、殴ってしまったくらいだし…」
微笑み答えるみずき…
「はは…あれは、でも…君が俺の気持ちを察してくれたから…君は人の情に流されやすいから、どんな話聞かされても好きでなければ断るんだよ」
コウヤにネンを押され…
「…はい」
自分のことをそこまで気にかけてくれるコウヤの優しさを受け取るように頷くみずき。
「よろしい」
いつものように満足そうな笑顔を浮かべ、みずきの頭を撫でるコウヤ。
「…コウヤさんも…頑張って、」
みずきにとってコウヤは兄のような存在、その人と別れなければならないのは悲しいけど、コウヤの未来がそこにあるなら、喜んであげなくては…
「ありがとう…、みずき…」
心に掠めるような言葉…
名前を呼ばれて…
なぜか急に寂しさの実感が押し寄せてくる。
「…今まで、ありがとうございました…元気で、」
ひきとめる言葉は言えない…
うつむきながら言った声は…少し震えていて、足元を見つめている瞳からは、ぽろぽろと…涙の雫が落ちる。
「……君もね、逆境に負けないように、強く生きて…」
「…ウン、」
伝えられた言葉を精一杯受け止めて…しっかり頷くみずき。
すずかみずき…
自分との別れに涙を流してくれる…ただひとりの人。
純粋な心の持ち主…
そっと肩を抱いてなだめながらコウヤは囁く…
「…幸せになるんだよ。俺もなるから…」
君が幸せになってくれることが、俺の幸せ…そう思えるはずだから…
「ウン…」
もう一度頷いて、涙を袖でクイッと拭い、なんとか笑顔をみせるみずき…
「…いいコだ、本当に…」
出会えて良かった…
本当に自分は救われたから…。
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