2 / 31

出逢い・礼於side

俺は久遠礼於(くおんれお)。16歳。自分で言うのも何だがいわゆるヤンキーだ。奇跡的にギリギリ進級して今年高2になる。 まだ今日は春休み中だから暇潰しに遊びに行って、帰るとこなんだがーー ーーん?アイツ… 駅のホームに居る時から、なんとなく目を引いた奴がいた。 スッと切れ長の黒目、サラサラの綺麗な黒髪、色白の肌。背も普通にあるからどう見ても男なんだが『和風美人』って言葉が頭に浮かんだ。 ――何だそりゃ… らしくねーな俺、何考えてんだ。それでなくともさっき運悪く他校のバカ共に絡まれて気分がワリィ。もちろん全員シメたけどな。 あー疲れたとっとと帰りてぇ、と停車した電車に乗り込む。もうここで和風美人の事はすっかり忘れてた。 けど。 俺は背が高ぇ方だからよく見えた。 発車して暫く経った車両の隅の方。さっきの和風美人が居る。けど、何か妙だった。青ざめて目を泳がせてる。 最初は具合でも悪いのかと思った。でも突然、肩が跳ねて急いで口に手を当てた。その時ようやく不自然に密着してるオヤジに気付いた。 ――マジかよ… 男に痴漢。まあ、あの容姿じゃ分かんなくもねーが…と思った俺をシバきてぇ。ふざけんな痴漢なんぞするクズと一緒にされてたまるか。 放っとく事にした。面倒は御免だし、被害者も幾ら美人だろうが男だ。自分で何とかするだろ。 だけど人間の情ってヤツか、気になってやっぱり目を向けた。 ――おいアイツ…泣いてねえ…? ぷるぷると小刻みに震えて、目に涙を浮かべていた。 あークソ!不本意ながらも俺は動く事にした。

ともだちにシェアしよう!