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御礼・礼於side

痴漢のオッサンを駅員に突き出した後、とっとと帰ろうとした俺の腕がガシッと掴まれる。 見ると例の和風美人が目を輝かせて俺の手を握ってきた。そしてブンブンと上下に振られる。うぜぇ。 「あの、本当にありがとう!君は命の恩人だよ!」 俺は引いた。大袈裟だろ命て。まあ、こいつにとっちゃそんくらいの危機だったかもしれねーが… つか離せ。 無言で手を振り払うと俺はスタスタ歩き出す。すると「あっ、ま、待って!」と慌てた声が追ってきた。無視。 「待って…あっごめんなさい!」 誰かにぶつかったらしい。 「お願い待っ…す、すみません!」 またぶつかったらしい。 「待っ…うわあああ!!」 悲鳴にようやく振り返ってみると、奴は旅行ババア集団の波に飲まれて流されかけていた。 何やってんだこいつ…どんくせぇ。 俺は仕方なしに戻ると和風美人の服を乱暴に引っ張り救出してやる。 「重ね重ね申し訳ありません…」 ボロボロの奴は馬鹿丁寧なお辞儀で礼を言ってきた。俺は溜め息を吐く。 「お前もしかして田舎モン?」 「えっ何で分かったの!?」 分かるわ。歩き方で一目瞭然だっつの。 「避けようとするんだけど上手くいかなくて、ぶつかっちゃうんだ」とへらっと笑う奴に軽く苛つく。こういう田舎野郎は迷惑でしかない。「いいか!」と声を荒げて諭す。 「人混みでは視点を遠くに置け!視野を広くしろ!ぶつかりそうになったらカニ歩きしろ!それと通行人の顔はじろじろ見るんじゃねえぞ!絡まれるからな!」

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