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御礼・睦月side
一瞬ライオンくん(勝手にあだ名つけた)が何を言ってるのか分からなくてポカンとしてしまったけれど、やがてアドバイスだと認識して嬉しくなる。
ぽわっと胸が温かくなった。慣れない都会で一人、右往左往していたから余計に。自然と顔が綻ぶ。
「ありがとう…優しいね」
するとライオンくんは何故か目を丸くして固まった。
あれ?どうしたんだろ。
「あの…?」と声を掛けると、我に返ったようにライオンくんはハッとして盛大な舌打ちをする。「クソっ…そんなつもりじゃねえんだよ」と吐き捨てた。
?と首を傾げるとライオンくんは再び舌打ちをして背を向ける。「ああっ」と僕は反射的に手を伸ばした。かろうじてライオンくんの服の袖を捉える。
「だ、だから待ってーーー!!!」
駅中に響きそうな大声で彼を止める。だって、どうしてもしたい事があるんだ。
周りの視線を感じながらも顔を上げると、目の前のライオンくんの額には青筋。「何なんだテメェは!!」と怒鳴られる。ど、どうしよう怒らせてしまった。
で、でもでも、ここは引けない。人としてちゃんとしなければ。お祖母ちゃんとポチ(実家の犬)僕に力を!
「きっ、君に御礼がしたいんだ!」
なんとか言えた。声すごい裏返ったけど。すぐ傍を通っていった女の人がクスクス笑ったのが視界の端に映る。
若干恥ずかしくなりながらも「あの、引っ越してきたばっかで、お金あんまり無いけど…」とアワアワ続けた。
牙を剥いていたライオンくんは、僕の言葉を聞くと拍子抜けしたように臨戦態勢を解く。うなじに手をやりながら暫く思案すると、顎でクイと近くの自動販売機を示した。
「…じゃ、そこのコーヒー奢れ」
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