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コーヒー・礼於side
調子が狂う。なんで俺はこいつの望み通りにしてやってんだ。無視すりゃいいだろ。
優しいとかふざけた事ぬかしやがるし。そんなん今まで言われたことねえぞ。意味わかんねえ。
だが俺の足は、満面の笑みで自販機に向かう奴の後ろを付いていっていた。クソ…マジ何やってんだ俺。
まぁこいつ意外と頑固そうだしこれ以上付きまとわれたら面倒だからな。さっさと飲んで帰るか。そう自分を納得させたその瞬間、俺の目はあるものを捕らえてカッと見開かれた。
「おい待てテメェ!!」
「えっ!?な、なに!?」
「コーヒーだよね」と金を入れたのはいい。
だがその後和風美人は『砂糖とミルクた~っぷり』の加糖タイプを選んで勝手に押そうとしやがった。そんな甘ったるいもん飲めるか勝手に選ぶな!!
奴が俺の怒号にびくりとしている隙にブラックのボタンを叩き押す。ガタンと取り出し口に缶コーヒーが落ちる音が響いた。奴は慌てる。
「ライオンくん!それ無糖だよ!すごく苦いよ!?『激苦』って書いてあるよ!?」
「ライオンくん!!?」
「しまった声に出てた!!」
奴はパッと口に手を当てる。しかし迸る俺の怒気を察したのか「ご、ごめんなさい…」と弱々しく詫びた。
「髪がキラキラしてライオンみたいにカッコよかったから、つい…」
あだ名を付けたわけか。
俺はキレるのも馬鹿馬鹿しくなって片手でコーヒーを開ける。ぐいっとイッキ飲みするとゴミ箱に放り投げた。
「…礼於だ」
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