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御挨拶・睦月side

るんるんとアパートに戻ってきて鼻歌混じりにお茶を淹れている(痴漢に遭った事なんてすっかり忘れてる)と、お隣から物音がした。 あ、お隣さん帰ってきたんだ!午前中はお留守だったもんね! 僕は挨拶をするべく用意していた手土産を持ちドアを開けて飛び出す。お隣の部屋の前に立つと一度深呼吸をしてからチャイムを鳴らした。 どんな人かな。いい人だといいな。 ドキドキしているとすぐにドアは開いた。ぺこっと御辞儀をする。 「初めまして!このたび隣に引っ越してきました水無瀬と申し…あっ!?レオくん!!?」 元気よく言いながら頭を上げた僕はびっくりした。相手もびっくりしていた。 キラキラな髪の毛。鋭い目つきは間違えようもなく、さっきまで一緒にいたレオくんだった。 僕は瞬きを高速で繰り返す。 え?お隣って…レオくん?え?本当に? すごい偶然だ!! 僕はパアアッと顔を輝かせる。嬉しさのあまり「レオくん!!」と彼に飛び付いた。 「うぉ!?離れろテメェ!!」とすぐに引き剥がされたけど。しょぼん。 「つかお前、何か落としたぞ…」 「あっ!お蕎麦が!」 レオくんの視線を辿って下を見ると手土産を落としてしまっていた。 しまった!食べ物なのに! 「蕎麦?」と怪訝な顔をするレオくんに「引っ越し蕎麦だよ」と箱をはたきながら返す。 「引っ越しの時には大家さんや御近所さんにお蕎麦を配るもんだって実家のお祖母ちゃんが言ってたから…でも落としちゃったし、また打ち直してくるね」 「打ち直す…って、まさかソレお前、手作りなのか…?」 あれ?何で驚いた顔してるのかな。 「そうだよ」と普通に答えるとレオくんは頭痛の時みたいに額に手を当てた。「価値観の違いってスゲェな…」とか呟いてる。 何の話だろ??

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